AI概要
【事案の概要】 原告(日本製紙株式会社)が、被告(旭化成株式会社)の保有する「セルロース粉末」に関する特許(特許第5110757号)について特許無効審判を請求したところ、特許庁が請求不成立の審決をしたため、原告がその取消しを求めた事案である。本件特許は、医薬用賦形剤等に使用されるセルロース粉末に関するもので、平均重合度、75μm以下の粒子の平均L/D、平均粒子径、見掛け比容積、見掛けタッピング比容積、安息角及び平均重合度とレベルオフ重合度との差分(差分要件)という7つのパラメータの数値範囲を発明特定事項とするものである。原告は、サポート要件違反(無効理由2)、明確性要件違反(無効理由3)、先行文献(特開平6-316535号公報)を主引用例とする新規性欠如(無効理由4)及び進歩性欠如(無効理由5)を主張した。 【争点】 1. サポート要件の判断の誤り(取消事由1):差分要件に関し、明細書記載のレベルオフ重合度が「原料パルプ」のものであって「該セルロース粉末」のものでないこと等から、当業者が課題を解決できると認識できないか。 2. 明確性要件の判断の誤り(取消事由2):平均重合度の測定方法が一義的に定まらないか、「天然セルロース質物質の加水分解によって得られるセルロース粉末」がPBPクレームに該当し不明確か。 3. 新規性の判断の誤り(取消事由3):甲12発明のセルロース粉末が差分要件を備えているか。 4. 進歩性の判断の誤り(取消事由4):甲12発明から差分要件の構成を容易に想到できるか。 【判旨】 請求棄却。取消事由1につき、裁判所は、本件出願当時の技術常識を踏まえると、セルロース粉末のレベルオフ重合度は原料パルプのレベルオフ重合度とおおむね等しいと理解でき、当業者は実施例が差分要件を満たすかどうかを把握できるとした。また、明細書の記載からセルロース粉末がレベルオフ重合度まで加水分解されると粒子L/Dが低下し成形性が低下するという差分要件の技術的意義を理解でき、差分要件の数値範囲全体にわたり課題を解決できると認識できるとして、サポート要件適合を認めた。取消事由2につき、平均重合度は第13改正日本薬局方記載の銅エチレンジアミン溶液粘度法により一義的に測定でき、平均重合度350超の場合も試料濃度変更により測定可能であるとし、PBPクレーム該当性も否定して、明確性要件違反を認めなかった。取消事由3につき、甲12にはレベルオフ重合度についての記載がなく、比較例1のセルロース粉末Hと甲12の試料Aは原材料及び加水分解条件が異なるため、レベルオフ重合度が一致するとは認められないとして、新規性欠如を否定した。取消事由4につき、甲12にはレベルオフ重合度や差分要件に関する記載・示唆がなく、差分要件の構成を採用する動機付けも認められないとして、進歩性欠如を否定した。