特許権侵害差止等請求控訴事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 控訴人(旭化成)は、発明の名称を「セルロース粉末」とする特許(特許第5110757号)の特許権者である。本件特許は、医薬品の錠剤化等に用いる圧縮成形用賦形剤として、成形性・流動性・崩壊性の諸機能をバランスよく併せ持つセルロース粉末に関するものであり、セルロース粉末の平均重合度、粒子の平均L/D、平均粒子径、見掛け比容積、見掛けタッピング比容積、安息角及び平均重合度とレベルオフ重合度との差分を特定の数値範囲に制御する構成を採用したものである。控訴人は、被控訴人(日本製紙)が「NPミクロース」の商品名で製造販売する食品添加物用途の結晶セルロース製品(被告製品1及び2)の製造販売等が本件特許権の侵害に当たると主張し、特許法100条1項及び2項に基づく差止め・廃棄並びに損害賠償を求めた。原審(東京地裁)は、被告製品1は本件発明1及び2の技術的範囲に属するが、本件特許にはサポート要件違反の無効理由があるとして、控訴人の請求をいずれも棄却した。控訴人が控訴し、当審で損害賠償請求を拡張した。 【争点】 (1) 被告製品1の構成要件1B及び2Bの充足性、(2) 被告製品2の構成要件1F及び2Fの充足性、(3) 被告方法の構成要件3Eの充足性、(4) 無効の抗弁の成否(実施可能要件違反、サポート要件違反、明確性要件違反、新規性・進歩性欠如)、(5) 差止請求及び廃棄請求の可否、(6) 損害額 【判旨】 一部変更(一部認容・一部棄却)。知財高裁は、まず被告製品1について、本件発明1及び2の構成要件をすべて充足し技術的範囲に属すると認定した。被控訴人の作用効果不奏功の抗弁(噴霧乾燥によらない製品は本件発明の効果を奏しない旨の主張)については、特許請求の範囲に噴霧乾燥に限定する記載はなく、明細書の記載も噴霧乾燥が必須とまでは述べていないとして排斥した。被告製品2については、見掛けタッピング比容積が構成要件を充足することの立証が不十分であるとして技術的範囲に属さないと判断した。被告方法についても構成要件の充足を認めなかった。無効の抗弁について、原審がサポート要件違反を認めた判断を覆し、本件明細書の記載及び本件出願時の技術常識から、当業者は差分要件の数値範囲の全体にわたり課題を解決できると認識できるとして、サポート要件に適合すると判断した。実施可能要件違反、明確性要件違反、新規性・進歩性欠如の主張もいずれも排斥した。差止め及び廃棄請求は、本件特許権が令和3年6月28日に存続期間満了により消滅したことから棄却した。損害額については、特許法102条3項に基づく実施料相当額として、化学分野のロイヤルティ料率、本件発明の技術的意義、控訴人の自己実施ポリシー等を総合考慮し、弁護士費用を含め合計363万3614円及び遅延損害金の支払を命じた。