AI概要
【事案の概要】 原告(株式会社アトラクションズ)は、「Attractions」の欧文字を図案化した標章(原告標章)を付した服飾雑貨等を製造・販売していた会社である。原告が原告標章の商標登録を検討したところ、株式会社IBEX(IBEX社)を商標権者とする登録商標「Attraction」(標準文字)の存在が判明したため、IBEX社が3年以上当該商標を使用していないことを理由に商標登録取消審判を請求した。これに対しIBEX社は、審判事件において、実際には登録商標を使用した事実がなかったにもかかわらず、登録商標をパーカーに付して使用していた旨の虚偽の主張を行い、事後的に改ざんした加工指示書等の証拠を提出した。さらにIBEX社は、原告に対し、商標権の譲渡代金1440万円の支払又は損害賠償金400万円の支払を求める連絡書を送付し、原告標章の使用差止め等を求める仮処分命令の申立てをした。原告はこれらの一連の行為により原告標章の使用を取り止めざるを得なくなり、不良在庫の発生や商標切替費用等の損害を被った。本件は、原告が、IBEX社の代表取締役であった被告に対し、上記一連の行為がIBEX社の不法行為を構成し、被告には代表取締役としての任務懈怠があったとして、会社法429条に基づき損害賠償を求めた事案である。 【争点】 (1) 被告の任務懈怠責任の成否(被告は名目的な代表取締役にすぎなかったか) (2) 損害の発生及び額並びに相当因果関係 (3) 過失相殺の可否 【判旨】 裁判所は、証人Dの証言等から、IBEX社が「Attraction」の刺繍を施したパーカーを製作した事実はなく、実質的経営者Bの指示により加工指示書が事後的に改ざんされたと認定し、IBEX社の一連の行為(虚偽主張、連絡書送付、仮処分申立て)は原告に対する不法行為を構成すると判断した。被告の任務懈怠について、被告はIBEX社唯一の役員として月額40万円ないし60万円の報酬を受領し、営業会議への出席や契約書類への署名押印等の業務に関与しており、名目的な代表取締役とはいえないとした上で、被告はBから本件係争について聞いていたにもかかわらず、代表取締役としての権限を行使せずBらに業務を漫然と任せきりにした結果、不法行為を惹起させたものであり、善管注意義務違反の任務懈怠があり、少なくとも重大な過失があったと認めた。損害については、不良在庫に関する損害996万7697円、商標切替費用224万9618円、弁護士費用279万7200円及び本訴弁護士費用150万円の合計1651万4515円を認容した。過失相殺については、原告が審判事件の結論が出る前に標章の使用を取り止めたことはやむを得ないものであったとして排斥した。