AI概要
【事案の概要】 本件は、「裏刷り用溶剤型グラビア印刷インキ組成物の製造方法および積層体の製造方法」に関する特許(特許第6458089号)について、特許庁が進歩性欠如を理由に特許取消決定をしたことに対し、特許権者である原告がその取消しを求めた事件である。 原告は、バイオマス由来のセバシン酸等を原料に含むポリウレタンウレア樹脂を用いたグラビア印刷インキ組成物の製造方法等に関する発明について特許出願し、設定登録を受けた。これに対し特許異議の申立てがされ、特許庁は、本件各発明が先行文献(甲1文献:特開2016-150942号公報)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものであるとして、特許取消決定をした。原告は訂正請求をしたが、訂正後の発明についても進歩性が否定された。 【争点】 主な争点は、本件各発明と甲1発明との間の以下の相違点に係る容易想到性の判断の当否である。 (1)相違点2:ポリカルボン酸としてバイオマス由来のセバシン酸を用いること及びバイオマス度を3〜40質量%とすること (2)相違点3:ポリウレタンウレア樹脂のアミン価及び重量平均分子量の数値範囲の特定 原告は、甲1文献にはバイオマス由来原料の使用について記載も示唆もないこと、バイオマス由来原料を用いるとインキ性能が低下すること、多数の原料候補からセバシン酸を選択することは困難であること、環状ジエステル生成の問題が阻害事由となること等を主張した。また、相違点2と相違点3は一体不可分の技術的思想として併せて判断すべきであるとも主張した。 【判旨】 知的財産高等裁判所は、原告の請求を棄却し、特許取消決定を維持した。 相違点2について、裁判所は、本件優先日当時、印刷インキの技術分野においても製品のバイオマス度を10質量%以上に高めることが一般的な課題とされていたこと、バイオマス由来のセバシン酸を樹脂原料として用いることは周知技術であったこと、甲1文献の段落【0016】にも二塩基酸としてセバシン酸が明示的に記載されていることから、当業者はバイオマス由来のセバシン酸を用いることを動機付けられると判断した。原告が主張する阻害事由(環状ジエステル生成の問題、甲2文献の比較例8の実験結果等)についても、いずれも当業者がセバシン酸の選択を阻害されるほどのものではないとした。 相違点3について、甲1文献に記載されたアミン価及び重量平均分子量の好ましい範囲が本件発明と全く同じであることから、実質的な相違点ではないとした。また、相違点2と3を一体不可分として判断する必要もないとした。 本件発明の効果についても、甲1発明から予測し得ない顕著な作用効果は認められないとして、全ての取消事由を排斥した。