著作権侵害請求控訴事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、タコの形状を模した公園用滑り台(通称「タコの滑り台」)の著作権侵害が争われた事案の控訴審である。控訴人(原告)は、前田屋外美術株式会社(旧商号「株式会社前田商事」)が製作した兵庫県赤穂市の公園に設置されたタコ型滑り台(本件原告滑り台)の著作権を同社から譲り受けたと主張した。前田商事は昭和38年の設立以降、全国各地の自治体等からの発注を受けてタコの滑り台を製作しており、その数は全国で260基以上に及ぶ。控訴人は、被控訴人(被告)が東京都内の2つの公園に設置したタコ型滑り台2基の製作行為が、控訴人の有する著作権(複製権又は翻案権)を侵害するとして、主位的に不法行為に基づく損害賠償432万円を、予備的に不当利得返還請求として同額の支払を求めた。原審(東京地方裁判所)は、本件原告滑り台は美術の著作物にも建築の著作物にも該当しないとして控訴人の請求をいずれも棄却したため、控訴人が控訴した。 【争点】 主な争点は、(1)本件原告滑り台が美術の著作物に該当するか、(2)建築の著作物に該当するか、(3)不当利得返還請求権の存否であった。控訴人は、本件原告滑り台は一品製作品であり著作権法2条2項の「美術工芸品」に当たると主張するとともに、仮にそうでなくとも応用美術として美術の著作物に該当すると主張した。さらに控訴人は、応用美術の著作物性の判断において、実用品としての機能を果たす構成を「観念的に捨象」して創作物を見るべきであり、滑り台としての機能を取り去ってみればその形状は彫刻家の創作的表現として抽象芸術の鑑賞対象となり得ると主張した。 【判旨】 知的財産高等裁判所は控訴を棄却した。まず、美術工芸品該当性について、タコの滑り台が一品製作品であるとの証拠は新聞記事等におけるB会長の発言や伝聞にすぎず客観的裏付けに欠けること、前田商事が260基以上のタコの滑り台を製作し本件原告滑り台は「ミニタコ」という類型に属する量産品であることから、美術工芸品には該当しないと判断した。次に応用美術としての著作物性について、裁判所は「実用目的を達成するために必要な機能に係る構成と分離して、美的鑑賞の対象となり得る美的特性である創作的表現を備えている部分を把握できるもの」については美術の著作物として保護され得るとの判断基準を示した上で、タコの頭部を模した部分のうち天蓋部分は実用機能と分離して把握できるが、その形状は単純でありふれたものにすぎず創作的表現を備えていないとした。タコの足を模したスライダー部分は滑り台としての実用目的に不可欠な構成であり、分離して把握できないとした。控訴人の「観念的捨象」の主張についても、実用に供されることを目的として製作された作品である以上、滑り台としての機能を観念的に捨象して検討することはできないとして退けた。建築の著作物該当性についても同様の理由で否定し、不当利得返還請求についても損失と利益の間の相当因果関係が認められないとして、原判決を相当と判断した。