AI概要
【事案の概要】 被告(旭化成ファーマ)は、副甲状腺ホルモン(PTH)を有効成分とする骨粗鬆症治療剤に関する特許(特許第6198346号)を保有していた。本件特許の請求項は、1回当たり200単位のPTH(1-34)又はその塩を週1回投与することを特徴とし、(1)年齢65歳以上、(2)既存骨折あり、(3)骨密度が若年成人平均値の80%未満等の3条件(本件3条件)を全て満たす骨粗鬆症患者に対し、48週を超過して72週以上までの間投与される骨折抑制のための骨粗鬆症治療剤を内容とするものであった。原告(沢井製薬)が本件特許の無効審判を請求したところ、特許庁は審判請求不成立の審決をしたため、原告がその取消しを求めて本件訴えを提起した。 【争点】 本件では、(1)明確性要件違反(PTHの「200単位」の測定方法の再現性)、(2)実施可能要件違反、(3)サポート要件違反(72週超の投与に関する記載の有無)、(4)進歩性欠如(本件発明1及び2が先行文献である甲7発明から容易想到か)が争われた。裁判所は事案に鑑み、進歩性(取消事由4-1)から判断した。主な争点は、甲7発明(PTH200単位を48週間投与する骨粗鬆症治療剤)に基づき、本件3条件を全て満たす患者に対して48週を超えて72週以上投与するという構成が容易に想到できるか、及び本件発明に予測できない顕著な効果があるかであった。 【判旨】 裁判所は、審決を取り消した。まず相違点1(患者群の特定)について、本件3条件の各条件はいずれも骨粗鬆症の一般的な診断要素や骨折の危険因子として広く知られたものであり、甲7発明の対象患者は本件3条件を満たしている蓋然性が高いとして、容易想到性を認めた。次に相違点3(投与期間)について、甲7発明では48週間で骨密度を8.1%有意に増大させており、PTHの投与を中止すれば骨密度が減少するという技術常識に照らせば、当業者が48週を超えて継続投与を試みる動機付けがあり、48週という期間設定は試験管理上の限界にすぎず阻害事由にはならないとした。効果の顕著性については、高リスク患者に対する骨折抑制効果が低リスク患者よりも高いことは本件明細書の記載からは理解できず、また甲7発明でも48週間の投与で椎体骨折発生数は0件であったことに鑑みると、48週超の投与で骨折発生率が0%となったことも予測の範囲内であるとして、いずれの効果も予測できない顕著なものとは認められないと判断した。以上から、本件発明1及び2の進歩性を認めた審決には誤りがあるとして、審決を取り消した。