AI概要
【事案の概要】 タクシー会社である被告に乗務員として勤務していた原告ら15名が、未払の時間外割増賃金があるとして、雇用契約に基づく未払割増賃金及び遅延損害金の支払いと、労基法114条に基づく付加金の支払いを求めた事案である。 被告は、京都でタクシー事業を営む株式会社であり、乗務員の勤務シフトは「1車2人制」(1台の車両を2名で使用し5日勤務後1日公休)と「2車3人制」(2台の車両を3名で使用)の2種類があった。被告と労働組合との間では、基本給のほか、月間営業収入に応じた歩合計算による「基準外1」「基準外2」の各手当、能率給、公休出勤手当等を定めた賃金協定が締結されていた。原告らは、被告が「基準外1」「基準外2」の各手当を割増賃金として支払済みと主張しているが、これらは割増賃金の基礎となる通常の賃金であり、別途割増賃金が未払であると主張した。 【争点】 (1) 原告らの労働時間数(被告が労働時間性を否認する4類型の該当性) (2) 割増賃金の算定基礎(「基準外1」「基準外2」各手当及び公休出勤手当の性質) (3) 消滅時効の成否(平成27年6月度の賃金請求について) (4) 未払割増賃金額 (5) 付加金支払の要否 【判旨】 裁判所は、原告らの請求を大部分認容した。 争点(1)について、被告は、乗客なしの長時間走行(長時間ドライブ)、出庫前の短時間走行(出庫前休憩)、休憩場所への移動時間、休憩場所からの戻り時間の4類型について労働時間性を否認したが、裁判所はいずれも労働時間に当たると判断した。タクシー乗務員が空車で走行している時間は、行燈を「空車」表示にしており、乗車希望の客がいればすぐに乗車させて運送業務を行うことになるのであるから、労働契約上の役務の提供が義務付けられており、使用者の指揮命令下に置かれていたと認定した。 争点(2)について、「基準外1」「基準外2」の各手当は、時間外労働等の有無及び時間数に関わらず月間営収に基づき算出されること、協定や雇用契約書等のいずれにもこれらが時間外労働の対価である旨の記載がないこと等から、通常の労働時間の賃金に当たる部分と割増賃金に当たる部分とを判別することができず、割増賃金の基礎となる通常の賃金に当たると判断した。一方、公休出勤手当については、公休日の労働に対する対価として支払われるものであり、割増賃金の基礎となる賃金には当たらないとした。 争点(3)について、平成27年6月度の賃金債権は2年の消滅時効により消滅したと認めた。 争点(5)について、本件に顕れた一切の事情を考慮し、付加金の支払を命じるのが相当と判断した。