AI概要
【事案の概要】 本件は、チャイルドセーフティシートの側面衝突保護部に関する特許(特許第6328108号)をめぐる審決取消請求事件である。特許権者である被告(サイベックス社)が保有する本件特許について、原告(ジョイー社)が特許庁に無効審判を請求したところ、特許庁は訂正を認めた上で無効審判の請求は成り立たないとする審決をした。原告は、同審決の取消しを求めて知的財産高等裁判所に提訴した。 本件特許の発明は、車両のシートに取り付けるチャイルドセーフティシートにおいて、シートシェル(基本構造体)の外側に側面衝突保護部を取り付け、この保護部が休止位置と機能位置の間で移動可能であり、側面衝突時に横からの力がシートシェルに導かれるよう配置されることを特徴とするものである。 【争点】 主な争点は以下の4点である。 (1) 取消事由1:甲5発明(米国特許出願公報)に基づく進歩性判断の誤り(無効理由3関係) (2) 取消事由2:「チャイルドセーフティシートの所定の幅」という記載の明確性要件違反(無効理由5関係) (3) 取消事由3:甲1発明(欧州特許出願公報)に基づく進歩性判断の誤り(無効理由1関係) (4) 取消事由4:甲4発明(日本公開特許公報)に基づく進歩性判断の誤り(無効理由2関係) 【判旨】 知財高裁は、取消事由1について理由があると認め、審決を取り消した。 まず、本件発明の「シートシェル」の解釈について、審決は「座部、背もたれと側面を備え、子供を載置する側を包み込むような形状である剛性のある素材から成るチャイルドセーフティシートの基本構造体」と解すべきところ、過度に限定的な解釈をしたと判断した。この解釈に基づき、甲5のチャイルド安全シートにおける「パッドで覆われるとともに子供を支持する背もたれ、座部からなるシート部分」は本件発明のシートシェルに相当すると認定し、審決の一致点・相違点の認定には誤りがあるとした(取消事由1-1-2)。 次に、本件発明1と甲5発明との唯一の相違点(側面衝突保護部の取付位置)について、甲5の明細書には保護部をシートシェルに相当する領域に配置し得ることが具体的に示唆されており、当業者が容易に想到し得ると判断した(取消事由1-1-3)。本件発明2ないし15及び16についても同様に進歩性は否定された。 一方、取消事由2(明確性要件違反)は理由がないとし、取消事由3(甲1発明)及び取消事由4(甲4発明)についても、甲1・甲4の側方支持部やヘッドガードはチャイルドシートの基本骨格構造を構成するものであり側面衝突保護部には相当しないとして、いずれも理由がないと判断した。