AI概要
【事案の概要】 弁護士である原告(在日コリアン、神奈川県弁護士会所属)が、選定者ら及び被告A・B・Cに対し、弁護士法58条1項に基づく違法な懲戒請求により名誉権等が侵害されたとして、不法行為に基づく損害賠償(各自11万円)を求めた事案である。 神奈川県弁護士会長は平成29年3月、神奈川朝鮮学園に通う児童・生徒への学費補助を求める会長声明を発出した。被告らは、インターネット上のブログ「D」から入手した懲戒請求書のひな型に署名押印し、原告を含む10名の弁護士を対象とする懲戒請求を行った。懲戒事由として「違法である朝鮮人学校補助金支給要求声明に賛同、容認し、その活動を推進することは確信的犯罪行為である」等と記載されていたが、実際には原告は本件会長声明に賛同する意向を表明したり活動を推進したりしたことはなかった。同様のひな型による懲戒請求は合計958件に上ったが、綱紀委員会はいずれも懲戒事由に当たらないとして懲戒しない旨の決定をした。 【争点】 1. 本件各懲戒請求が不法行為を構成するか 2. 原告の損害額 【判旨】 裁判所は、懲戒請求が事実上又は法律上の根拠を欠く場合において、請求者がそのことを知りながら又は通常人であれば知り得たのにあえて懲戒を請求するなど、弁護士懲戒制度の趣旨目的に照らし相当性を欠くときは不法行為を構成するとの判断枠組みを示した。 本件懲戒事由のうち、会長声明への賛同等については、原告が実際にはそのような行為をしていないことから事実上の根拠を欠き、仮に賛同していても確信的犯罪行為には当たらないとした。在日コリアン弁護士協会との連携についても、同協会と連携することが品位を失うべき非行に該当する根拠は見当たらないとして法律上の根拠を欠くとした。被告らはこれを知り得たのにあえて懲戒請求に及んだとして、不法行為の成立を認めた。 損害額については、原告が本件会長声明に関与していないにもかかわらず懲戒請求の対象とされたのは、その氏名から在日コリアンであると判断されたためと考えられるとし、本件各懲戒請求は人種差別的意図に基づく差別的言動であると認定した。もっとも、個々の懲戒請求による精神的苦痛の算定にあたり、同種の懲戒請求が多数行われたこと自体は斟酌できないとして、慰謝料3万円及び弁護士費用3000円の合計3万3000円を認容した(請求額11万円の約3割)。