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【事案の概要】 北海道砂川市在住の原告は、北海道猟友会砂川支部の支部長であり、砂川市の鳥獣被害対策実施隊の隊員でもあった。平成30年8月、砂川市内でヒグマが3日連続で目撃され、住民から不安の声が上がっていたことから、砂川市が原告に出動を要請した。原告は当初、目撃されたヒグマが子熊であるため逃がすことを提案したが、市職員から住民の不安を理由に駆除を依頼され、ライフル銃で子熊1頭を駆除した。駆除は成功し、現場にいた警察官も発射を制止せず、むしろ住民の避難誘導を行っていた。ところが、北海道公安委員会は、原告の発射行為が「弾丸の到達するおそれのある建物に向かって」銃猟をしたもので鳥獣保護管理法38条3項に違反し、銃刀法10条2項1号・11条1項1号に該当するとして、平成31年4月にライフル銃の所持許可を取り消した。原告は審査請求を経て本件取消訴訟を提起した。 【争点】 (1) 本件発射行為の銃刀法11条1項1号該当性(鳥獣保護管理法38条3項違反の有無) (2) 本件処分における要件裁量の逸脱の有無 (3) 本件処分における効果裁量の逸脱・濫用の有無 【判旨】 裁判所は、事案に鑑み効果裁量(争点(3))について検討し、原告の請求を認容した。銃刀法11条1項1号の取消処分は裁量処分であり、その判断が重要な事実を欠くか社会通念に照らし著しく妥当性を欠く場合に裁量権の逸脱・濫用として違法となるとの判断枠組みを示した上で、以下の事情を総合考慮した。すなわち、(1)原告の出動が砂川市の要請に基づく公益目的の行為であったこと、(2)現場の警察官が発射の可能性を認識しながら制止せず、むしろ発射を前提に住民の避難誘導を行っていたこと、(3)ヒグマの背後に草木に覆われた高さ約8mの土手があり、発射位置から見える建物は1棟のみで、その屋根の一部が見えるか見えないかという程度であったこと、(4)原告とヒグマの距離がわずか15〜19mでスコープ付きライフル銃を使用し、ヒグマが立ち上がるのを待って発射するなど慎重に対処したこと、(5)弾丸はヒグマに命中し建物への被弾等の実害は一切なかったこと、(6)検察庁が不起訴処分とし北海道知事も狩猟免許取消しを行わなかったこと等である。これらの事情に照らせば、仮に鳥獣保護管理法違反の余地があるとしても、所持許可の取消しは社会通念に照らし著しく妥当性を欠き、裁量権の逸脱・濫用に当たるとして、本件処分を違法と判断した。