商標権侵害行為差止等請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 剣術の流派「小野派一刀流」の第18代宗家を名乗る原告が、破門した被告らに対し、被告らが日本古武道振興会のウェブサイトや演武大会のパンフレット等において「小野派一刀流剣術」「小野派一刀流」の名称を使用することが、原告の登録商標(第41類「剣道を主とする古武道の教授」)に係る商標権の侵害、不正競争防止法2条1項1号の不正競争行為(周知な商品等表示との混同惹起)、及び原告が代表する団体の名称権の侵害に当たるとして、商標法37条1項、不正競争防止法3条1項及び名称権に基づき、その差止めを求めた事案である。小野派一刀流は室町時代の伊藤一刀斎に創始され、徳川将軍家の剣術師範を務めた小野忠明を経て津軽藩に伝えられた由緒ある流派であり、先々代宗家の笹森順造が禮楽堂を建設して指導に当たり、先代宗家の建美がその道統を継承していたが、建美の死後、遺言に基づき原告が宗家に指名された。被告らは、古武道振興会の決定により代表会員の地位を得て活動を続けていた。 【争点】 (1) 被告らによるウェブサイト及びパンフレット等での「小野派一刀流」名称の使用が商標法2条3項の「使用」に当たるか、(2) 演武が本件商標の指定役務「剣道を主とする古武道の教授」と同一又は類似の役務か、(3) 商標権の効力が及ぶか(商標法26条1項3号の適用の有無)、(4) 本件商標に商標法4条1項7号の無効事由があるか、(5) 不正競争防止法上の「商品等表示」の「使用」に当たるか、(6) 原告標章が周知な営業表示といえるか、(7) 名称権侵害の成否。 【判旨】 裁判所は、原告の請求をすべて棄却した。まず商標権侵害について、古武道振興会のウェブサイトにおける「小野派一刀流剣術」の表示は、保存振興の対象となる古武道の流派の名称を五十音順に列挙したものにすぎず、被告らの提供するサービスの出所を識別し得る態様で表示されたもの(商標的使用)とは認められないとした。演武大会のパンフレットやめくりにおける表示についても同様に、演武される流派又は演武者の名称として掲げられたものにすぎず、商標法2条3項の「使用」には当たらないと判断した。不正競争防止法に基づく請求についても、本件標章使用は古武道の流派等を意味するものにすぎず「商品等表示」の「使用」に該当しないとした。さらに周知性について、「小野派一刀流」の名称は、順造・建美・原告のいずれの代においても、継承した流派の名称を示すにとどまり、剣道の教授に係る周知な営業表示として使用された事実は認められないと判断した。名称権侵害の主張についても、原告が代表し「小野派一刀流」を名称とする団体の存在を認める証拠がなく、仮に存在しても代表者個人が団体の権利を行使し得る法的根拠はないとして退けた。