AI概要
【事案の概要】 昭和51年3月2日、北海道庁1階エレベーター付近に手製の時限式消火器爆弾が仕掛けられ、爆発により2名が死亡、81名が負傷した事件(北海道庁爆破事件)について、請求人は爆発物取締罰則違反、殺人、殺人未遂により起訴され、昭和58年に札幌地裁で死刑判決を受けた。確定判決は、犯行声明文中の「*」印記号が請求人の筆跡と一致する蓋然性が高いこと、請求人居室から発見されたマイナスネジ(本件ネジ)が爆弾の時限装置に使用された旅行用時計のリン止め用ネジであること、目撃証言、動機、アリバイの不成立等を総合して請求人を犯人と認定し、控訴・上告とも棄却されて死刑が確定した。請求人は第1次・第2次再審請求をいずれも棄却された後、本件第3次再審請求に及んだ。 【争点】 (1) 犯行声明文中の「*」印記号について、デジタル画像処理技術による新たな筆跡鑑定(本件鑑定)により、請求人とは別人が筆記したことが明らかになったか(刑訴法435条6号の再審事由の有無)。 (2) 請求人居室から発見された本件ネジについて、その発見が捜査機関によるねつ造であることを明らかにする新証拠が存在するか。 【判旨(量刑)】 再審請求棄却。 争点(1)について、裁判所は本件鑑定の手法に複数の疑問を指摘した。第一に、検査対象筆跡の異常性(作為筆跡か否か)の判断基準について、鑑定人自身が「基準があるわけではなく感覚で判断する」と証言しており客観性を欠くこと、また判断手法自体にも、群内マッチング残差の分布が自然であっても作為筆跡の可能性を排除できないという論理的限界があることを指摘した。第二に、筆跡サンプルに施された射影変換の逆変換処理について、個人内変動が主として射影ひずみであるという仮説の論理的正当性が検証されておらず、第三者による追試も学会での広い賛同もないことから、この処理を前提としたマッチング残差の合理性に疑問があるとした。第三に、疑問筆跡3個のうち2個がテープの貼付等の筆記条件の影響を受けているにもかかわらず、その影響を捨象して字形の幾何学的相違度のみで筆者異同識別を行うことは合理性を欠くとした。以上から本件鑑定を信用できないと結論した。 争点(2)について、写真撮影報告書のネガフィルムが不存在であることは、検察官の回答変更の経緯を示すにすぎず、警察官によるねつ造を具体的に推認させるものではないとした。また、本件ネジの傷に関する各鑑定書の記載状況についても、鑑定事項が傷の有無に着目したものではなかったことに照らし不自然とはいえないとして、ねつ造の主張を排斥した。 以上により、新証拠はいずれも無罪を言い渡すべき明らかな証拠に該当せず、再審請求には理由がないとして棄却した。