AI概要
【事案の概要】 本件は、「内装用短尺コーナー材による施工方法」に関する特許(特許第6031065号)の無効審判請求を不成立とした特許庁の審決について、原告(無効審判請求人)がその取消しを求めた事案である。 被告は、建物の壁面仕上げに用いるコーナー材について、従来の長さ2500mm程度の長尺なものに代え、1000〜1800mmの短尺コーナー材を用いる施工方法の特許を保有していた。この施工方法は、短尺コーナー材を小型車両で搬送する第1工程、作業場所で少なくとも2本のコーナー材を直線上にセットしオーバーラップ部分を切除する第2工程、カット面を対峙させないように反転・接合する第3工程、パテ施工を含む内装仕上げを行う第4工程からなる。原告は、本件特許にはサポート要件違反、明確性要件違反、実施可能要件違反、訂正要件違反及び理由不備があるとして、5つの取消事由を主張した。 【争点】 (1) 理由不備(特許法157条2項4号違反)の有無 (2) 訂正要件違反の有無(明細書中の「接続」を「接合」に訂正した本件訂正の適法性) (3) サポート要件違反の有無(コーナー材端部の形状、孔部の有無、3本以上使用する場合等) (4) 明確性要件違反の有無(「市販のコーナー材」「小型の搬送用車両」「接合」等の用語の明確性) (5) 実施可能要件違反の有無 【判旨】 知的財産高等裁判所は、原告の請求を棄却した。 取消事由1(理由不備)について、審決はサポート要件、明確性要件及び実施可能要件の各無効理由について実質的に判断しており、理由不備はないとした。 取消事由2(訂正要件違反)について、訂正前明細書では同じ施工段階について「接合」と「接続」の2つの用語が混在していたことから、本件訂正は誤記の訂正及び不明瞭な記載の釈明に当たり、特許請求の範囲を実質上変更するものでもないとした。原告が主張する「接続」と「接合」を合理的に使い分ける解釈は、訂正前明細書にそのような解釈を裏付ける記載が存在しないとして排斥した。 取消事由3(サポート要件違反)について、現場ではさみ等で切断したカット面同士を対峙させると隙間が生じやすいという課題は当業者にとって自明であり、第3工程でカット面を対峙させないように接合することで効果(3)(密着性の確保・隙間防止)が、さらに第4工程のパテ施工等により効果(4)(従来と遜色ない仕上げ)が得られることを当業者は理解できるとした。原告が指摘するコーナー材端部の形状や孔部に関する例外的場面の問題も退けた。 取消事由4(明確性要件違反)について、各用語は当業者にとって明確に理解でき、発明全体として第三者の利益を不当に害するほど不明確ではないとした。特に「接合」は「つぎあわすこと」を意味する一般的用語であり、特異な解釈を要する事情はないとした。 取消事由5(実施可能要件違反)について、発明の詳細な説明は第1〜第4工程を含む実施例の具体的説明を記載しており、当業者が過度の試行錯誤なく実施できるとした。なお、原告の主張の多くは、サポート要件、明確性要件、実施可能要件の各要件を正確に峻別せず重ねて述べるものであり、当業者であれば想定しない例外的場面を捉えて問題を指摘するものであって到底採用し得ないと付言した。