AI概要
【事案の概要】 原告(株式会社トミーズ・スター)は、「カット手法を分析する方法」と題する発明について特許出願をしたが、拒絶査定を受け、拒絶査定不服審判を請求した。同発明は、美容師が顧客の写真等からカット手法を体系的に分析する方法に関するもので、(1)分析対象者の写真等から自然乾燥状態のナチュラルストレートのヘアスタイルを推定する第1ステップ、(2)分析対象セクションを選択する第2ステップ、(3)選択したセクションに対してアウトライン分析やカットライン分析等の分析項目から分析を行う第3ステップ、(4)分析結果からカット手法に関する情報を導出する第4ステップからなる。特許庁は、各ステップがいずれも人間の精神活動そのものであり、自然法則を利用したものではないとして、特許法2条1項の「発明」に該当しないと判断し、審判請求を不成立とした。原告は本件審決の取消しを求めて知的財産高等裁判所に訴えを提起した。 【争点】 本願補正発明が特許法2条1項に規定する「発明」(自然法則を利用した技術的思想の創作)に該当するか否か。具体的には、第1ステップないし第4ステップの各工程が自然法則を利用したものといえるかが争われた。原告は、各ステップは毛髪の物理的性質や生物学的特徴という自然法則を利用しており、また明細書にはデータベースやAIによる完全機械化も記載されているから、人の精神活動そのものとはいえないと主張した。被告(特許庁長官)は、各ステップは人が頭の中で行う精神活動そのものであり、自然法則に関する知識を利用しているにすぎないと反論した。 【判旨】 請求棄却。裁判所は、特許法2条1項の「発明」に該当するか否かは、技術的課題、技術的手段の構成及び効果等の技術的意義に照らし、全体として「自然法則を利用した技術的思想の創作」に該当するか否かによって判断すべきであるとの判断枠組みを示した上で、本願補正発明の各ステップを検討した。第1ステップについては、発明特定事項に具体的な技術的手段を用いた推定が特定されておらず、分析者が写真等を見て毛髪の知識や経験を踏まえて頭の中で自然乾燥ヘアスタイルを推定することを含むものであるから、精神活動そのものであると判断した。第2ないし第4ステップについても同様に、分析者が頭の中でセクションの選択、分析項目による分類、カット手法の導出を行うことを含むものであり、いずれも人の精神活動そのものであると判断した。原告が主張した物理的検証可能性やデータベース・AI化の可能性についても、発明特定事項に機械等の介在が特定されていない以上、判断を左右しないとした。以上から、本願補正発明は全体として「自然法則を利用した技術的思想の創作」に該当せず、特許法2条1項の「発明」に該当しないとして、審決の判断に誤りはないと結論づけた。