AI概要
【事案の概要】 本件は、商標登録無効審判請求を不成立とした特許庁の審決の取消しを求める事案である。被告は、「ベガス」の片仮名を横書きしてなる商標(商標登録第6080857号)の商標権者であり、指定役務には第41類「娯楽施設の提供」等が含まれる。原告は、「ベガス」の語は米国ネバダ州ラスベガスの略称として広く一般に知られており、本件商標は役務の提供の場所や質を普通に表示する標章にすぎないとして、商標法3条1項3号(記述的商標)に該当し無効であると主張した。これに対し特許庁は、「ベガス」がラスベガスの略称として需要者に広く認識されていたとは認められないとして、無効審判請求を不成立とする審決をした。 【争点】 本件商標「ベガス」が、指定役務「娯楽施設の提供」との関係において、商標法3条1項3号(役務の質、提供の場所等を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標)に該当するか否か。具体的には、「ベガス」の語がラスベガスの略称として広く一般に知られているといえるかが中心的な争点となった。 【判旨】 知財高裁は、原告の請求を棄却した。まず、「ベガス」の語について、複数の国語辞典にラスベガスの略称として掲載されている事実を認定しつつも、辞典への掲載はその語が広く一般に知られていることを直ちに示すものではないと判示した。次に、新聞・雑誌等における実際の用例を検討し、全国紙やウェブサイトの記事見出しに「ベガス」がラスベガスの略称として用いられた例が相当数存在することを認めたが、そのほとんどは見出しにのみ「ベガス」の語が用いられ、記事本文では改めて「ラスベガス」の語が用いられていることを指摘した。この事実は、「ベガス」の語単体では読者にラスベガスと理解されないことに備えたものと解されるとし、「ベガス」がラスベガスの略称として広く一般に定着しているとは認め難いと判断した。さらに、「娯楽施設の提供」の役務との関係でも、国外の地であるラスベガスが提供の場所を表すとは通常理解され難く、また我が国では「娯楽施設の提供」に「賭博場の提供」は含まれないと解されることから、需要者が本件商標からラスベガスを直ちに想起するとはいえないとした。以上から、本件商標は商標法3条1項3号に該当せず、審決に誤りはないと結論付けた。