危険運転致死(予備的訴因|道路交通法違反,過失運転致死)被告事件
判決データ
- 事件番号
- 令和1わ667
- 事件名
- 危険運転致死(予備的訴因|道路交通法違反,過失運転致死)被告事件
- 裁判所
- 大津地方裁判所
- 裁判年月日
- 2021年12月21日
AI概要
【事案の概要】 被告人は、滋賀県高島市の宿泊施設に支配人として勤務していたところ、令和元年5月4日午後8時頃から午後10時45分頃にかけて、勤務先のレストランでビール、近隣のスナックでウイスキーを飲酒した。その後、義父を京都市内の病院まで車で送り届けた後、勤務先に戻るため国道161号を運転中、同月5日午前零時50分頃、大津市北比良の志賀バイパス上で対向車線を時速約78kmで逆走し、対向から進行してきた普通貨物自動車に衝突した。この事故により、被害車両に同乗していた9歳の児童が脳挫傷で死亡した。被告人はゴールデンウィーク中の繁忙で連日長時間勤務が続き、睡眠不足の状態にあった。 【争点】 主位的訴因である危険運転致死罪(自動車運転処罰法3条1項)の成否が主要な争点となった。具体的には、(1)被告人がアルコールの影響により正常な運転に支障を生じるおそれがある状態で運転したか、(2)事故時にアルコールの影響により正常な運転操作が困難な状態に陥っていたかが争われた。弁護人は、異常運転の原因は連日の長時間勤務による疲労と睡眠不足に起因する眠気であり、アルコールの影響ではないと主張した。予備的訴因として道路交通法違反(酒気帯び運転)及び過失運転致死罪も掲げられた。 【判旨(量刑)】 裁判所は、主位的訴因である危険運転致死罪の成立を認め、被告人を懲役4年に処した。まず、事故約3時間半後の呼気検査結果(0.05mg/L)をもとに、法医学専門家の証言に基づくウィドマーク式で血中アルコール濃度を逆算し、事故時において少なくとも0.576mg/ml(WHO基準の軽度酩酊域)のアルコールを体内に保有していたと認定した。次に、事故前の運転状況を詳細に分析し、逆走開始前にはふらつきや急な減速・停止等の断続的仮睡状態を示す異常運転があった一方、逆走開始後は加速しながら対向車線に進出し、カーブに沿って約550m・25秒間にわたり時速約78kmで安定して走行していた点に着目した。裁判所は現場で検証も実施し、道路の傾斜(バンク)の影響を踏まえても、意識的なハンドル操作なしには車線逸脱は不可避であることを確認した。以上から、逆走時の被告人は覚醒状態にあったが、何ら必要性のない危険な逆走を選択した判断の不合理性はアルコールによる思考・判断能力の低下以外では説明できないと結論づけた。量刑では、9歳の被害者の生命が奪われた結果の重大性、飲酒後の運転の非難可能性を重視しつつ、前科がないこと、任意保険による賠償の見込み等を一定程度考慮した(求刑懲役6年)。