AI概要
【事案の概要】 本件は、動画共有サービス「YouTube」に編み物の動画を投稿していた原告が、被告らからYouTubeに対してなされた著作権侵害通知により自身の動画2本が削除されたことについて、当該通知が不法行為に当たると主張し、精神的損害100万円、経済的損害(広告収益の逸失利益)約7万9000円、弁護士費用約10万8000円の合計約118万7000円の損害賠償を求めた事案である。 原告は、和裁技能士1級の資格を持ち、編み物の制作過程や作品を撮影した動画をYouTubeに投稿していた。被告Bは、同じく編み物動画を投稿する者であり、被告Dは被告Bとともに古美術品売買業を共同経営する者である。被告Bは、原告の編み物動画2本について、編み方が自身の動画と類似しているとしてYouTubeに著作権侵害通知を行い、原告動画は令和2年2月6日から同年8月29日までの約206日間にわたり削除された。なお、YouTubeの制度上、著作権侵害通知が3回なされるとアカウント停止・全動画削除という重大な不利益が生じ得る。 【争点】 (1) 本件著作権侵害通知による不法行為責任の成否(原告動画が被告動画の著作権を侵害するか、被告Bに故意又は重過失があるか) (2) 被告D(共同経営者)の共同不法行為責任の有無 (3) 損害の発生及びその額 (4) 原告がYouTubeの異議申立制度を利用しなかったことによる過失相殺の可否 【判旨】 裁判所は、編み方の技術や手法というアイデア自体は著作権法の保護対象とならず、技術内容の表現についても創作性の範囲は狭いとした上で、原告動画と被告動画を対比し、編み方の説明ないし表現方法として殊更に類似しているとは認められないと判断し、著作権侵害を否定した。その上で、被告Bは編み方が同一又は類似であれば著作権侵害になるとの独自の見解に基づき、複数の投稿者に対して繰り返し著作権侵害通知を行っていたと認定し、著作権侵害がない蓋然性を認識しながらあえて本件通知を行ったものとして、少なくとも重過失があったと認めた。被告Dについても、Cの責任者として著作権侵害通知を認識しつつ助力・加担していたとして共同不法行為責任を認めた。 損害額については、慰謝料5万円、広告収益の逸失利益1万7929円、弁護士費用6792円の合計7万4721円を認容した。過失相殺については、原告が弁護士を通じて異議申立てを行っていたこと等から、過失相殺を相当とする程度の過失は認められないとして否定した。