再生計画認可決定に対する抗告棄却決定に対する許可抗告事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 病院を経営する医療法人社団冠心会を再生債務者とする民事再生手続において、管財人が、取引先である株式会社エーエヌディーとの間で和解契約を締結した上で再生計画案の可決・認可に至ったことに対し、再生債権者である抗告人らが、当該和解契約の締結は民事再生法174条2項3号(再生計画の決議が不正の方法によって成立するに至ったとき)に該当する事由があると主張して争った事案である。エーエヌディーは冠心会に対し、執行認諾文言付き公正証書に基づく約10億円の売掛金債権等を届け出ていたが、管財人は、これらの取引に架空取引が含まれるとして全額を否認し、逆に冠心会のエーエヌディーに対する約11億7500万円の不当利得返還請求権の査定申立て及び請求異議訴訟を提起していた。管財人は、再生裁判所の許可を得た上でエーエヌディーと和解を締結し、管財人が上記訴訟等を取り下げる代わりに、エーエヌディーが再生計画案に賛成票を投じ、認可後に相殺処理で債権債務を清算する内容とした。この和解に基づきエーエヌディーが賛成票を投じた結果、再生計画案は議決権総額の約61%の同意を得て可決されたが、エーエヌディーは約20%の議決権を有していた。 【争点】 管財人がエーエヌディーとの間で締結した和解契約が、エーエヌディーに対して不正な利益を供与するものであり、再生計画案への賛成と引き換えにされた信義則に反する行為として、民事再生法174条2項3号の不認可事由(「不正の方法」による決議の成立)に該当するか。 【判旨】 最高裁は、各抗告を棄却した。本件和解契約によれば、冠心会は認可決定確定時に約640万円の解決金債権を取得し、相殺により権利変更後の届出債権全額を消滅させることができる。和解締結当時、エーエヌディーの届出債権には双方が弁護士を代理人として作成した公正証書という相応の根拠がある一方、管財人側は届出債権の不存在等を裏付ける確たる証拠を有しているとは言い難い状況にあった。加えて、エーエヌディー自身も再生手続中であり、仮に冠心会の債権が確定しても回収不能となる部分が少なくないと見込まれた。これらの事情及び冠心会の再生手続の進行状況を考慮すれば、本件和解契約はエーエヌディーに一方的に有利なものではなく、冠心会にとっても合理性がある。和解契約の内容、冠心会の客観的状況、締結の経緯等に照らせば、本件和解契約が専らエーエヌディーの議決権行使に影響を及ぼす意図で締結されたとまではいえず、不正な利益の供与や信義則違反とも断じ難いとして、法174条2項3号該当性を否定した。 【補足意見】 菅野博之・草野耕一裁判官の補足意見は、管財人の選任された再生手続では、管財人が権利関係の調整と事業再生という二つの目的を同時に達成するため、再生債権者との交渉・合意等を行うことは当然に予想されるとし、債権処理と再生計画案への同意の約束が結びつくこと自体から直ちに「不正の方法」と判断することは困難であるとした。ただし、弁済充当資金の減少や議決権行使の自由の実質的侵害など、不正の方法と認めるに足りる的確な事情の主張立証が抗告人側に求められるとした。三浦守裁判官の補足意見は、管財人の公平誠実義務の観点から慎重な検討が必要としつつ、本件和解契約はエーエヌディーに実体的な利益を供与・移転するものとは言い難く、冠心会にとっても合理性があったとして結論に賛成した。もっとも、再生裁判所が自ら和解契約を許可したこと自体は、法174条2項3号の不認可事由がないと判断する理由とはなるべきではないとの留保を付した。