著作者人格権等侵害行為差止等請求控訴事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、弁護士である一審被告Yに対して懲戒請求を行った一審原告が、一審被告Yが自身のブログに掲載した反論記事に関し、著作権(公衆送信権)侵害、著作者人格権(公表権)侵害及びプライバシー権侵害を主張して、差止め・削除及び損害賠償を求めた事案の控訴審である。一審原告は、懲戒請求書をPDFファイルに複製してブログ記事内にリンクを張った行為が著作権等を侵害するとして、一審被告Yに対し200万円の損害賠償等を請求した。また、一審被告Yの訴訟代理人である一審被告Zが自身のブログ記事に一審被告Yの記事へのリンクを張った行為が著作権侵害の幇助に当たるとして、150万円の損害賠償を請求した。原審は、懲戒請求書のPDFファイルの削除のみを命じ、その余の請求を棄却したため、双方が控訴した。 【争点】 (1)懲戒請求書の著作物性、(2)懲戒請求書の公表の有無、(3)著作権法32条1項の引用の適法性、(4)公衆送信権・公表権に基づく権利行使が権利濫用に当たるか、(5)プライバシー権侵害の有無、(6)一審被告Zのブログ記事掲載の不法行為性が争われた。特に、一審原告が自ら産経新聞社に懲戒請求書の内容を提供し報道が行われた経緯を踏まえ、一審被告Yによる懲戒請求書全文の引用が権利濫用に該当するかが中心的争点となった。 【判旨】 知財高裁は、一審原告の請求をすべて棄却し、原審が命じたPDFファイル削除も取り消した。まず、懲戒請求書の著作物性は認めつつも、公表された著作物とは認められないため、著作権法32条1項の適法引用には該当しないとした。しかし、権利濫用の成否について詳細に検討し、(1)懲戒請求書は鑑賞目的で創作されたものではなく独創性も高くないため、一審原告の財産的・人格的利益はもともと大きくないこと、(2)一審原告自身が産経新聞社に情報提供して報道を招来したことで保護されるべき利益が相当程度減少していたこと、(3)一審被告Yが弁護士としての信用・名誉回復のためブログで反論する目的は正当であること、(4)懲戒請求書全文をリンクで引用した態様も、要旨のみの摘示では恣意的との疑念を招くおそれがあったことから相当であったことを総合考慮し、一審原告の権利行使は権利濫用に当たると判断した。プライバシー権侵害についても、懲戒請求者の氏名は懲戒請求に関する重要事項であり、一審原告自身が匿名のまま相手方弁護士の実名を公にしたという事情の下では、反論に際して懲戒請求者名を明らかにすることは許容されるとして、侵害を否定した。一審被告Zについても、幇助の意思が認められず違法性はないとした。