発信者情報開示請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、イラストレーターである原告が、ツイッター上で氏名不詳者により、原告の著作物であるイラストに別のイラストを重ね合わせるなどの加工を施した画像を含むツイートが無断で投稿されたことについて、著作権(複製権・自動公衆送信権)、著作者人格権(同一性保持権)、名誉権及び営業権が侵害されたと主張し、ツイッターを運営する被告(米国法人)に対し、プロバイダ責任制限法4条1項に基づき発信者情報の開示を求めた事案である。原告は、ペンネーム「B」で活動し、ハンドメイド作家向けに女性の横顔のイラスト等を1点3000〜5000円で販売していた。2つのアカウントから計4件のツイートが投稿され、原告がトレース(既存の絵をなぞって写し取る手法)によりイラストを作成したとの疑惑を指摘する内容であった。原告は、被告が保有するログイン時のIPアドレス・タイムスタンプ、電話番号及び電子メールアドレスの開示を求めた。 【争点】 主な争点は、(1)本件各投稿により原告の権利侵害が明らかであるか(著作権侵害、同一性保持権侵害、名誉毀損、営業権侵害の各明白性)、(2)ログイン時のIPアドレス及びタイムスタンプが省令5号・8号の「発信者情報」に該当するか、(3)改正後の省令3号の「電話番号」が省令施行前の投稿にも適用されるかであった。被告は、各投稿はトレース疑惑の検証目的であり著作権法32条1項の引用として適法である、ログイン情報は侵害情報の発信とは別個の行為であり開示対象とならない等と主張した。 【判旨】 裁判所は、名誉毀損について、一連のツイートを通覧すれば、原告がトレースによりイラストを作成したという事実を明示的に摘示するものであり、原告のイラストレーターとしての社会的評価を低下させると認定した。原告はトレースをしておらず、摘示事実は真実ではないとして、違法性阻却事由の存在をうかがわせる事情は存在しないと判断した。また、一部のツイートについて、イラストの添付が引用の目的上正当な範囲を超えるとして、複製権・自動公衆送信権の侵害を認め、トリミングによる同一性保持権侵害も認めた。ログイン時のIPアドレスについては、プロバイダ責任制限法4条1項の「権利の侵害に係る」との文言にやや幅を持たせた解釈により、侵害情報の発信と密接に関連し同一人物のものである確度が高い情報であれば開示対象となるとし、各投稿以前の直近のログイン情報に限り開示を認めた。省令3号の電話番号については、発信者情報開示請求権は訴え提起時に発生するとして改正後の省令を適用し、開示を認容した。結論として、原告の請求を一部認容し、一部棄却した。