特許権侵害差止請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、鎮痛剤に関する特許権(発明の名称「イソブチルGABAまたはその誘導体を含有する鎮痛剤」)を有する米国法人の原告(ワーナー・ランバート社)が、ジェネリック医薬品メーカーである被告ら3社(ニプロ株式会社、全星薬品工業株式会社、全星薬品株式会社)に対し、被告らが製造販売承認を取得したプレガバリン(先発品「リリカ」のジェネリック品)が原告の特許発明の技術的範囲に属するとして、特許法100条1項・2項に基づき、製造・販売・販売の申出の差止め及び廃棄を求めた事案である。原告の特許は、てんかん等に有用とされていたGABA類縁体の化合物が、痛みの処置における鎮痛剤として使用できることを見出した医薬の用途発明であり、本件明細書にはホルマリン試験、カラゲニン試験及び術後疼痛試験の3種の試験結果が記載されていた。被告ら医薬品の効能・効果は「神経障害性疼痛」「線維筋痛症に伴う疼痛」であった。 【争点】 主な争点は、(1)本件特許1・2のサポート要件違反及び実施可能要件違反の有無(争点1)、(2)訂正の再抗弁における訂正要件充足性(争点2)、(3)本件発明3・4の技術的範囲に被告ら医薬品が属するか(争点5)、(4)均等侵害の成否(争点6・7)等である。被告らは、本件明細書に記載された3つの試験結果は侵害受容性疼痛(炎症性疼痛・術後疼痛)に関するものにすぎず、神経障害性疼痛や線維筋痛症に対する鎮痛効果は裏付けられていないと主張した。 【判旨】 裁判所は、原告の請求をいずれも棄却した。まず本件発明1・2について、特許請求の範囲の「痛み」には種類の限定がなく、本件明細書に列挙された各種の痛みを含むところ、本件明細書で化合物の有効性を確認した試験はホルマリン試験、カラゲニン試験、術後疼痛試験の3つのみであり、いずれも侵害受容性疼痛に関する試験結果にすぎないとした。原告は、あらゆる慢性疼痛は神経細胞の感作によって生じ、本件3試験で感作の抑制効果が確認されたと主張したが、裁判所は、あらゆる慢性疼痛が神経細胞の感作によって生じるとは認められないとして、サポート要件違反の無効理由があると判断した。訂正発明1・2についても、本件3試験の結果から化合物があらゆる類型の神経障害性疼痛や線維筋痛症による痛覚過敏・接触異痛に有効であると理解することはできず、訂正は新規事項の追加に当たり、訂正要件を満たさないとした。本件発明3・4については、「炎症を原因とする痛み」「手術を原因とする痛み」はいずれも侵害受容性疼痛を意味すると解釈し、神経障害性疼痛・線維筋痛症を効能とする被告ら医薬品は技術的範囲に属しないと判断した。均等侵害についても、侵害受容性疼痛と神経障害性疼痛・線維筋痛症は機序の異なる本質的に別種の痛みであるとして否定した。