銃砲刀剣類所持等取締法違反、殺人未遂被告事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 かつて指定暴力団甲組系列の暴力団構成員であった被告人が、対立抗争状態にあった指定暴力団乙組系列の暴力団幹部である被害者(当時52歳)を殺害しようと企て、令和2年8月15日午後9時17分頃、山口県岩国市内の路上において、回転弾倉式拳銃で弾丸5発を発射し、うち3発を被害者の左前腕部及び右大腿部に命中させ、加療約351日間を要する左橈骨開放骨折、右深大腿動脈損傷等の重傷を負わせたが殺害の目的を遂げなかったという殺人未遂・銃刀法違反の事案である。被告人は犯行の相当期間前から名古屋市から岩国市周辺に赴き、被害者の使用車両にGPS端末を取り付けて動静を追跡し、19発の試し撃ちを行うなど周到な準備を重ねていた。犯行2日後に拳銃を所持して自ら岩国警察署に出頭した。原審(山口地裁・裁判員裁判)は懲役17年を言い渡し、被告人側が控訴した。 【争点】 (1) 原判決が当事者の主張にない「組織的背景」を認定した訴訟手続の法令違反の有無、(2) 銃刀法31条の5所定の提出自首の判断遺脱の有無、(3) 量刑不当(懲役17年が重すぎるか)。特に、被害者との示談(100万円の一時見舞金及び控訴審での1000万円の解決金)を量刑上有利に考慮すべきかが争われた。 【判旨(量刑)】 広島高裁は控訴を棄却した。争点(1)について、原判決は本件拳銃の没収の可否の判断で他の関与者の存在を否定できないと述べたにとどまり、組織的背景に基づく犯行と認定したものではないとして、所論は原判決を正解していないと退けた。争点(2)について、職権で判断し、被告人が犯人発覚前に拳銃を持参して警察署に出頭した事実から提出自首の成立を認めた。原審が当事者の主張がないことを理由に提出自首の成否に触れなかった点は審理不尽の違法があるとしたが、処断刑の範囲への影響は上限が30年から25年になるにとどまり、原判決の懲役17年はその範囲内で上限に近い部分ともいえないこと、量刑の中心は殺人未遂の罪であること等から、判決に影響を及ぼすことが明らかとはいえないとした。争点(3)について、至近距離から38口径拳銃で5発全弾を発射した態様の危険性、GPS端末や試し撃ちによる周到な準備、住宅街での犯行による地域社会への甚大な不安、暴力団抗争を契機とした反社会的動機等を考慮し、銃器類を用いた殺人未遂の中でも相当に重い部類に位置付けた原判決の評価は正当とした。示談については、被害者が乙組から甲組に移籍した経緯で締結された形式的なものであり、量刑軽減事情として考慮することは相当でないとする原判決の評価を、裁判員裁判体の健全な市民感覚を反映したものとして支持した。