発信者情報開示請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 山岳写真を専門とするネイチャーフォトグラファーである原告は、登山用の衣服を着用し登山用ロープを身に纏った自身の姿を撮影し、画像編集ソフトで背景を変更するなどの加工を施してオリジナル画像を作成した。原告はこの画像をツイッターのプロフィール画像として使用していた。ところが、氏名不詳者が、原告のオリジナル画像の顔部分にキャラクターのイラストと「ボク、わかんない。」という文字を合成した画像を作成し、別のツイッターアカウントのプロフィール画像としてアップロードした。原告は、このアップロード行為が著作権(公衆送信権)及び著作者人格権(同一性保持権)を侵害するものであるとして、ツイッターを運営する被告に対し、プロバイダ責任制限法4条1項に基づき、当該アカウントに係る電子メールアドレス及び電話番号の開示を求めた。 【争点】 (1) 本件アップロードによる権利侵害が明らかであるか。被告は、オリジナル画像の顔部分にキャラクターが重ねられたことで表現の本質的特徴が失われており、公衆送信権侵害は成立しないと主張した。 (2) 同一性保持権の侵害は「侵害情報の流通によって」生じたものといえるか。被告は、改変行為自体は画像のアップロードや配信とは別であり、プロバイダ責任制限法の要件を満たさないと主張した。 (3) 発信者の電話番号が開示請求の対象となるか。本件アップロード行為は省令改正(令和2年8月施行、電話番号を開示対象に追加)前に行われたものであり、被告は改正省令の遡及適用は許されないと主張した。 【判旨】 裁判所は、原告の請求を全部認容した。争点(1)について、本件画像はオリジナル画像の顔部分(画像全体の面積の8分の1程度)にキャラクターのイラスト等を合成したものにすぎず、それ以外の大部分がオリジナル画像と全く同一であり、原告の姿勢、背景、構図等の特徴的な表現を明確に覚知できると認定した。したがって、本件アップロードはオリジナル画像自体を公衆送信した行為とも評価でき、公衆送信権侵害が明らかであるとした。被告の「表現の本質的特徴が失われている」との主張についても、画像の大部分が同一である以上、両者を別個の著作物と評価することはできないとして退けた。争点(3)について、裁判所は、発信者情報開示請求権は侵害情報の流通時に発生するが、開示義務の対象となる発信者情報の内容は請求権行使の時点で施行されている法令に従って決せられると判示した。原告の請求権行使時には改正省令が施行済みであるから、電話番号も開示対象となるとし、遡及適用の問題は生じないとした。公衆送信権侵害が認められたことから、同一性保持権侵害(争点2)については判断を省略した。