謝罪広告等請求控訴事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 芸能人である一審原告(お笑いコンビのメンバー)が、出版社である一審被告(新潮社)に対し、週刊新潮及びウェブサイト上に掲載された「一審原告が日本大学芸術学部に裏口入学した」とする記事等が名誉毀損に当たるとして、損害賠償、謝罪広告の掲載及びウェブ記事の削除等を求めた事案の控訴審である。一審被告は、記事の内容が経営コンサルタントを名乗る人物からの聴取に基づくものであり、真実であるか少なくとも真実と信じる相当の理由があったと主張した。原審(東京地裁)は、ウェブ記事の削除と慰謝料400万円及び弁護士費用40万円の合計440万円の損害賠償を認容し、その余の請求(謝罪広告の掲載、パブリシティ権侵害に基づく損害賠償等)を棄却した。双方が控訴し、一審原告は控訴審で電車内吊広告による謝罪広告の掲載請求を追加した。 【争点】 主な争点は、(1)電車内吊広告によるパブリシティ権侵害の有無、(2)本件各記事等による名誉毀損の成否、(3)名誉毀損に係る違法性阻却事由(真実性・相当性)の存否、(4)損害額、(5)ウェブ記事の削除請求の可否、(6)週刊新潮・ウェブサイトへの謝罪広告の要否、(7)電車内吊広告による謝罪広告の要否である。中心的争点は、一審被告が主張する違法性阻却事由の存否であり、裏口入学の事実が真実であるか、又は真実と信じる相当の理由があったかが問われた。 【判旨】 知財高裁は、双方の控訴をいずれも棄却し、一審原告が控訴審で追加した電車内吊広告による謝罪広告請求も棄却した。まず、本件各記事等が一審原告の名誉を毀損するものであることを認め、記事内容が公共の利害に関する事実に係り公益目的に出たものであると認定しつつも、一審原告が公職に就いたことはなく公共性・公益性の程度はさして高くないとした。真実性については、記事の核心が経営コンサルタントの供述を録取した文書に依拠しているところ、同文書には編集スタッフが事前に入手していた雑誌記事の内容と配列順序まで酷似する箇所があり、録取の正確性に疑問があるとした。また、卒業生要録の記載や伝聞証拠についても裏口入学の真実性を裏付けるには不十分であり、かえって担任教諭や同級生への取材結果は一審原告の学力が演劇学科に合格し得る水準であったことを示していると認定した。相当性についても、編集スタッフが客観的な入試日程や合格発表日すら把握せず、一審原告の否認を受けても追加の裏付け取材を行わず、日大への取材も締切直前のFAXのみで実質的に行っていないなど、取材が不十分であったとして否定した。損害額は原審どおり440万円とし、ウェブ記事の削除も維持した。謝罪広告については、一審原告が芸能人として各種メディアを通じ自ら名誉回復を図り得ることから、その掲載を命ずることは相当でないと判断した。