AI概要
【事案の概要】 商業施設の内装デザイン等を手掛ける原告(株式会社アノワ)が、化粧品・美容用品の販売を行う被告(同じく株式会社アノワ)に対し、3つの請求を行った事案である。原告は遅くとも平成12年頃から「ANOWA」のロゴ標章を事業に使用し、商標登録も得ていた。一方、被告は平成30年6月に商号を「株式会社山神」から「株式会社アノワ」に変更し、「ANOWA41」という商品名で女性用デリケートゾーンケア商品を販売していた。被告の当時の代表者Bは、テレビ出演等で「歩く百億円」の異名をとる著名な実業家であった。原告は、(1)被告の標章が原告標章の著作権(複製権)及び著作者人格権(同一性保持権)を侵害するとして著作権法112条に基づく差止め、(2)被告が不正の目的で同一商号を使用しているとして会社法8条2項に基づく商号使用差止め及び抹消登記手続、(3)被告ドメイン名(ANOWA41.JP)の使用が不正競争防止法2条1項19号の不正競争に該当するとして同法3条1項に基づく差止めを求めた。なお、裁判所は和解を勧告し被告も応じる意向を示したが、原告が和解を受け入れなかったため和解は打ち切られた。 【争点】 (1)原告標章の著作物性の有無、(2)被告標章の依拠性の有無、(3)著作者人格権侵害の有無、(4)会社法8条1項の「不正の目的」の有無、(5)会社法8条2項の「侵害されるおそれ」の有無、(6)被告ドメイン名による不正競争行為の有無。 【判旨】 請求をいずれも棄却した。争点(1)について、裁判所は、文字から構成される標章は本来的に出所表示等の実用目的で使用されるものであるから、それ自体が独立して美術鑑賞の対象となる創作性を備えている特段の事情がない限り著作物に該当しないとの規範を示した。原告標章は一般的なセリフフォントで商号をローマ字表記し2行に分けて配置したロゴタイプにすぎず、文字配置の特徴を考慮してもロゴタイプとしてありふれたものであり、美術鑑賞の対象となる創作性は認められないとした。原告が主張した文字選定の創作性、配置の安定感、躍動感等についても、いずれも実用目的の域を出ないと判断した。争点(4)について、原告と被告は本店所在地(埼玉と愛知)も業種(内装デザインと化粧品販売)も全く異なり、著名な実業家であった被告代表者には原告の知名度や信用を利用する意思も必要性もなかったとして、「不正の目的」を否定した。争点(6)についても同様の理由で、不正競争防止法上の図利加害目的は認められないとした。