債務不存在確認等請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 原告は、飲食店経営を目的とする株式会社であり、被告が経営するホテルオークラ東京の旧本館において「久兵衛」の名称で寿司店を営んでいた。旧本館の建て替えに伴い、原告は平成27年、仮処分申立事件において被告との間で和解を成立させ、別館への一時移転と新本館完成後の再入居を取り決めた(平成27年和解)。この和解では、新本館の賃貸借予約契約(本件予約契約)が締結され、賃貸借部分の具体的位置等は「双方協議の上、別途検討する」とされ、賃料は月間総売上額の20%とする旨が定められた。 被告は平成28年12月、新本館高層棟4階のアーケード内の一区画(約72.88㎡)を原告の店舗として提示したが、原告はこれを一方的な指定であるとして異議を述べ、和食堂に近接する場所を希望した。交渉は平行線をたどり、原告は平成30年9月に本件訴訟を提起した。その後、令和2年2月に再度の仮処分事件において和解(令和2年和解)が成立し、上記区画について賃貸借契約(本件賃貸借契約)が締結された。この和解では、本件訴訟の判決確定まで暫定賃料を支払うこと、本件賃貸借契約に基づく主張立証活動を行わないことが合意された。原告は令和2年11月から新本館で営業を開始した。 本件は、原告が被告に対し、本件賃貸借契約の賃料が月額137万8800円を超えないことの確認と、被告が協議義務に違反して一方的に区画を指定したことによる信用毀損等の損害賠償1000万円の支払を求めた事案である。 【争点】 1. 賃料確認請求に係る訴えの適法性 2. 本件区画の適正賃料額 3. 被告による協議義務違反の有無 4. 損害の有無及び額 【判旨】 裁判所は、賃料確認請求について、本件賃貸借契約の賃料に関する具体的な金額や客観的に確定し得る基準について当事者間の合意が認められないことから、原告の請求は裁判所に新規賃料額の司法判断による決定を求めるものにほかならないと判断した。新規賃料の額について、契約当事者の合意や形成権に基づかずに訴訟事件又は非訟事件として決定する権限を裁判所に付与する実定法上の根拠規定は存在せず、「法律上の争訟」(裁判所法3条1項)に当たらないとした。原告は借地借家法32条の類推適用を主張したが、同条は継続賃料を対象とする規定であり、賃貸目的物が異なる本件賃貸借契約は新規の契約であるから類推適用の余地はないとして排斥した。さらに、令和2年和解における本件賃貸借契約に基づく主張立証活動を行わない旨の合意にも反するとした。 協議義務違反に基づく損害賠償請求については、本件協議条項はいずれも被告がどのような配慮や提案をすべきか等について具体的な定めをしたものではなく、これらによって原告主張の義務を被告が負うとは解されないとした。また、仮に被告が義務を尽くしたとしても原告の店舗位置が希望どおりになったかは判然とせず、因果関係も認められないとして請求を棄却した。 以上により、賃料確認請求は不適法として却下し、損害賠償請求は理由がないとして棄却した。