AI概要
【事案の概要】 本件は、B病院臨床麻酔部の講師であった被告人が、同部部長である共犯者Aと共謀の上、医理学機器の販売会社D社の担当者らから、手術室等に設置する生体情報モニタ等につきD社製品が納入されるよう有利便宜な取り計らいを受けたいとの請託を受け、その報酬として、Aが代表理事を務める一般社団法人名義の口座に200万円を振込入金させ、Aの職務に関し第三者に賄賂を供与させたという第三者供賄罪の事案である。Aは臨床麻酔部長として医療機器の選定・購入に実質的な決定権限を有しており、被告人はAの指示の下、D社との商談や打合せを担当していた。Aは医療機器メーカーから寄附金を獲得することに注力しており、D社に対しても、モニタ等の納入先に選定する見返りとして高額の寄附金を要求していた。 【争点】 被告人に共謀共同正犯が成立するか、それとも幇助犯にとどまるかが争点となった。弁護人は、(1)被告人は正犯といえるほどの関与行為をしていない、(2)大学への研究費としての寄附と認識しており個人的利益を得る意思がなく正犯意思が欠ける、(3)共犯者Aも寄附金の入金先や入金時期等の重要事項を被告人と共有しておらず「共同意思主体」が形成されていないとして、幇助犯にとどまると主張した。 【判旨(量刑)】 裁判所は、被告人の共謀共同正犯の成立を認めた。その理由として、被告人がD社に送信したメールは、公務員の職務との対価関係を明示しつつ高額の寄附金を要求するものであり、D社に請託を決意させる上で決定的に重要な役割を果たしたと評価した。また、被告人自身も臨床麻酔部の共同の利益のために寄附金の実現が望ましいと認識しており、自己の役割の重要性を理解しつつ犯行に加担したと認定した。弁護人の主張に対しては、個人的利益の取得意思がなくとも共同の利益のために犯行を推進した以上、共同正犯の成立は否定されないとし、寄附金の入金先等の不共有も「共同意思主体」の形成を否定する事情にはならないと判示した。 量刑については、職務の公正さに対する社会の信頼を大きく毀損する悪質な犯行であるとしつつも、犯行を立案・主導したのは専ら共犯者Aであり被告人の関与は極めて限定的であったこと、被告人は私腹を肥やす目的ではなく臨床麻酔部の立て直しのためと考えていたこと、反省の態度を示していること等を考慮し、求刑懲役1年2月に対し、懲役1年・執行猶予3年を言い渡した。