AI概要
【事案の概要】 原告は観光船事業を行うにあたり、札幌市から、運河護岸・物揚場護岸登録、工作物等施工許可、港湾施設占用許可、港内行事等許可、建築確認などの各処分(本件各原処分)を受けていた。ところが、札幌市は平成30年4月27日、これら各原処分を取り消すなどの不利益処分(本件各不利益処分)を行った。原告は、本件各不利益処分の取消しを求めて訴えを提起した(基本事件)。 ところが、被告である札幌市は、訴訟の中で、本件各原処分自体が法令解釈を誤った不適法なものであり、それゆえこれを取り消した本件各不利益処分は適法であるとの主張を展開した。これを受けて原告は、本件各原処分が違法であるならば国家賠償法1条1項上も違法となるとして、行政事件訴訟法21条1項に基づき、処分取消訴訟から国家賠償請求訴訟への交換的な訴えの変更を申し立てた。 【争点】 行政事件訴訟法21条1項に基づく訴えの変更(処分取消訴訟から国家賠償請求訴訟への交換的変更)が認められるための要件、特に「請求の基礎に変更がない」といえるか、また変更を許すことが相当か。 【判旨】 裁判所は、本件訴えの変更を許可した。 まず、行政事件訴訟法21条1項が、請求の基礎に変更がなく、裁判所が相当と認めるときに訴えの変更を許すことができる旨定めていることを確認したうえで、本件では、旧請求(取消訴訟)と新請求(国家賠償請求)の審理において、本件各原処分に至る経緯、その根拠、処分後の原告の行為等に関する主張・証拠が既に提出されており、これらは新請求の審理でも利用することが十分期待できると指摘した。さらに、旧請求と新請求はいずれも、本件各不利益処分により観光船事業が立ち行かなくなったことを前提に、その救済(取消しまたは損害賠償)を求めるものであり、事業の救済という点で共通していることから、請求の基礎に変更はないと認めた。 また、前提事実は旧請求と新請求とで大きく異ならず、追加で必要となるのは過失の有無や損害額といった点に限られるため、訴えの変更を認めずに新訴提起を促せば、迅速な審理(行政事件訴訟法7条、民事訴訟法2条)に反し訴訟経済を害するとした。 被告は、紛争解決のためには本件各不利益処分の適否についての明確な司法判断が必要であると主張したが、裁判所は、原告が訴えの変更後は不利益処分の効力・適法性を争わないと明らかにしており、訴えの変更が認められれば取消訴訟の出訴期間(行訴法14条1項)徒過により原告はもはや取消しを求めることができなくなるため、変更後の訴えで紛争解決は足りるとして、被告の主張を退けた。 本決定は、行政処分取消訴訟において被告行政庁自身が原処分の違法を主張するという特殊な場面で、原告に国家賠償請求への転換を柔軟に認め、訴訟経済と実効的救済の調和を図った実務上意義のある判断である。