AI概要
【事案の概要】 本件は、「シート状物の積層体」(ポップアップ式ウェットティッシュの折畳み・積層構造)に係る特許権(特許第3877000号)を有する原告(株式会社フクヨー)が、被告らによる被告各製品の販売等が当該特許権を侵害するとして、特許法100条1項・2項に基づく差止めと廃棄、および同法102条2項等に基づく損害賠償金2200万円等の連帯支払を求めた事案である。 本件発明は、シート状物を第1の中間片、第2の中間片、第1の折片、第2の折片の4部分に折り畳み積層することで、包装体のサイズを変えずに従来より大きいシート状物を収納でき、かつ積み重ねた際の安定感を高めることを特徴とする。構成要件Cでは、第2の中間片の幅が「第1の中間片の略1/2の幅」であることが定められていた。 被告らはダイソーを展開する株式会社大創産業および製造元の株式会社PPJ、株式会社Life-do.Plusであった。なお、被告Life-do.Plusの無効審判請求により特許庁が本件特許を無効とする審決をしており、原告は知財高裁に審決取消訴訟を提起している。 【争点】 主たる争点は、被告各製品が本件発明の技術的範囲に属するか、特に構成要件C(第2の中間片の幅が第1の中間片の「略1/2」であること)を充足するかであった。原告は、素材の伸縮性や製造誤差を踏まえ1/2を超えない範囲で広く許容されると主張。被告らは、「略1/2」を不当に拡張解釈すべきでなく、1/2に対し90%を下回る場合は該当しないと反論した。 【判旨】 東京地裁(民事第40部・佐藤達文裁判長)は、原告の請求をいずれも棄却した。 裁判所は、本件明細書の記載から、本件発明の課題は包装体サイズを維持しつつ大きなシート状物を収納し、かつ安定した積層体を実現することにあり、この課題を解決し所期の効果を得るには、第2の中間片の幅を、第1の中間片の1/2を超えない範囲で可能な限り1/2に近づけることが必要と判示。その上で、「略」の通常の語義と構成要件Cの技術的意義に照らし、各種誤差や素材の伸縮性を考慮しても、1/2との乖離が1割程度の範囲を超える場合は「略1/2」に該当しないと解釈した。 そして、当事者合意の下で測定された各被告製品について、第2の中間片の幅の比率が90〜100%に収まる枚数は全80枚中ごく少数で、平均値も80〜84%にとどまっていた。裁判所は、被告各製品は構成要件Cを充足しないと認定し、その余の争点(無効理由、損害額等)を判断するまでもなく請求をすべて棄却した。 本判決は、寸法に関する構成要件中の「略」のような幅を有する文言を、発明の課題・効果に照らし客観的・数値的に画する解釈手法を示した点で、特許侵害訴訟における実務的意義を有する。