特許権侵害差止等請求控訴事件
判決データ
- 事件番号
- 令和1ネ10036
- 事件名
- 特許権侵害差止等請求控訴事件
- 裁判所
- 知的財産高等裁判所
- 裁判年月日
- 2020年1月21日
- 裁判官
- 高部眞規子、小林康彦、関根澄子
- 原審裁判所
- 東京地方裁判所
AI概要
【事案の概要】 本件は、「梁補強金具およびこれを用いた梁貫通孔補強構造」という名称の特許権を有する被控訴人(原告・特許権者)が、控訴人(被告)に対し、控訴人が製造・販売する製品が本件特許発明の技術的範囲に属し、特許権を侵害するとして、差止め・廃棄請求および約1377万円の損害賠償を求めた事案の控訴審である。 本件特許発明は、鉄骨造建築物の梁に配管等を通すための貫通孔を補強するリング状金具に関する発明であり、訂正後の請求項では、貫通孔より外径が大きいフランジ部を金具外周部の軸方向の片面側の「端部」に形成し、その片面側が内周からフランジ部外周まで平面となる構成を採用することを特徴としている。この構成により、梁への取付けの際、片面からのみ溶接すれば足り、施工性が向上するという利点がある。 原審東京地裁は、侵害の成立を認め、差止め・廃棄請求を認容するとともに、特許法102条2項に基づき約156万円の損害賠償を認めた。これに対し控訴人が控訴し、進歩性欠如による特許無効、および損害額における特許発明の寄与度を理由とする推定覆滅を主張した。 【争点】 争点は、(1)被告製品が本件特許発明の技術的範囲に属するか、(2)本件特許に進歩性欠如等の無効理由があるか(特に先行文献乙19記載の発明に周知技術を組み合わせて容易に想到できたか)、(3)特許法102条2項による損害額の推定について、特許発明の寄与度等を理由として推定が覆滅されるかである。 【判旨】 知財高裁は控訴を棄却した。 まず進歩性については、先行文献乙19の発明は裏当て体を鋼管外周部の「ほぼ中央部」に形成するものであり、これを「端部」に形成することの記載も示唆もなく、端部に設ける構成とする動機付けがない。控訴人が提出する周知例も、梁補強金具においてフランジ部を管の軸方向端部に設ける構成を示すものではなく、あるいは技術分野が異なるから、周知技術を組み合わせても容易に想到できたとはいえないと判断した。 損害額については、特許法102条2項の趣旨を確認した上で、推定覆滅の判断においては、市場の非同一性、競合品の存在、侵害者の営業努力、侵害品の性能、特許発明が侵害品の部分のみに実施されている場合の位置付け・顧客誘引力等を総合考慮すべきと一般論を示した。その上で本件については、特徴部分がフランジ部のみにあるとはいえず、また被告製品のカタログ等で宣伝される「梁の反転が不要となり施工性が大幅にアップ」という訴求点は、本件発明に係る梁補強金具の通常想定される取付態様にほかならないから、独自工法による効果とはいえないとして、寄与度による推定覆滅を認めず、侵害により得た利益全額約142万円を損害額として認定した。もっとも、原判決が認容した約156万円を超えて被控訴人に有利に変更することは不利益変更禁止原則により許されないとして、控訴棄却の結論を維持した。