損害賠償請求控訴事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、宗教法人法に基づく解散命令を受けた後に旧破産法の規定により破産を宣告された宗教法人オウム真理教の破産管財人との間で、その後継団体とされる控訴人(Aleph等)が、被害者に対する損害賠償債務に相当する残債務全額を引き受ける旨の合意(平成12年合意)を締結した経緯を背景とする事件である。破産管財人は本件破産事件の終結に先立ち、破産裁判所の許可を得て、控訴人に対する債権を被控訴人(オウム真理教犯罪被害者支援機構)に譲渡した。被控訴人は、この譲り受けた債権に基づき、控訴人に対し約10億2953万円及び遅延損害金の支払を求めた。原審はおおむね請求を認容したため、控訴人が控訴し、当審において被控訴人は請求元本額を約10億2536万円に減縮した。 【争点】 主な争点は、(1)平成12年合意の法的性質(債務引受契約か、負担付贈与契約か、信託的財産譲渡契約か、無条件の債務負担契約(実質は贈与)か)、(2)同合意が破産管財人による脅迫、錯誤、詐欺、背信行為等を理由に無効又は取消しの対象となるか、(3)本件債権譲渡が合意の趣旨に反し、譲渡禁止債権該当・公序良俗違反・信頼関係破壊等により無効となるか、(4)破産手続結了に伴い控訴人の債務が消滅したか、(5)請求額の計算方法の正当性及び破産管財人報酬等の控除の可否である。 【判旨】 控訴棄却。裁判所は、平成12年合意は、控訴人が破産者オウム真理教の後継団体的立場にあることを踏まえ、人身被害者債権者の届出債権の残額に相当する額の債務を負担する旨の「債務負担契約(実質は贈与契約)」であると解するのが相当とした。合意には破産手続結了後の資金提供に関する定めも置かれており、破産手続の終結により控訴人の債務が随伴的に消滅する関係にはないと判断した。破産管財人による脅迫・欺罔や錯誤の事実は認められず、平成18年最判(破産者が自由財産から任意弁済した場合の判例)は事案を異にし適用されない。また、本件債権は性質上譲渡を許さない債権には当たらず、合意第1項4号の一体性の定めも譲渡禁止の反対意思表示には当たらないとした。被控訴人は破産管財人と同様の配当義務を当然に負うものではなく、信頼関係破壊による合意失効や公序良俗違反による債権譲渡無効も認め難いとした。破産管財人報酬等の諸費用についても、控訴人が負担すべき債務の範囲から当然に除外されるものではないとして、請求額の計算方法に問題はないと結論づけた。本判決は、破産手続を経た宗教法人の後継団体による被害者救済資金拠出合意の法的性質を「実質は贈与としての債務負担契約」と位置付け、破産終結後もその履行義務が存続することを明確にした点で、破産実務及び被害者救済の観点から意義を有する。