商標権侵害行為差止等請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、「サクラホテル」等の登録商標を保有する原告サクラホテル及び桜の図形商標を保有する原告さくら亭が、被告に対し、被告が運営する宿泊施設において使用している「SAKURA SKY HOTEL」の文字標章及び桜の花びらを模した図形標章が原告らの商標権を侵害すると主張した事案である。原告サクラホテルは東京都内の池袋、日暮里、神保町、幡ヶ谷の4か所で訪日外国人客を主なターゲットとするホテルを営業している。これに対し、被告は平成29年9月以降、「桜スカイホテル」ないし「SAKURA SKY HOTEL」の名称で宿泊施設2か所を営業している。原告らは、商標法36条1項に基づき被告標章の使用差止めを求めるとともに、原告サクラホテルは民法709条に基づき1か月当たり300万円の損害賠償を請求した。なお、原告サクラホテルは被告に対し事前に商標権侵害の警告を発していた経緯がある。 【争点】 原告商標と被告標章とが類似するか、特に被告標章の要部をどう捉えるかが主要な争点となった。原告らは、被告標章のうち「SKY」「HOTEL」「KASHIWA」の各文字部分は自他識別力が低く、「SAKURA」の文字部分と桜の花びら図形部分が要部であると主張した。これに対し被告は、「SAKURA SKY」が一体として称呼・観念を生じる造語であると反論した。また、取引の実情として、インターネット予約サイトでの検索特性を考慮すべきかも争われた。 【判旨】 東京地裁は、原告らの請求をいずれも棄却した。裁判所は、商標の類否判断に関する最高裁判例の枠組み(氷山印事件、小僧寿し事件等)を引用しつつ、被告標章の要部を図形部分並びに「SAKURA」及び「SKY」の文字部分と認定した。「SKY」が高層建物の宿泊施設名称に一般に用いられるとの原告主張については、低層の宿泊施設でも使用されている証拠があり、役務の性質表示とは認めがたいとして退けた。原告商標からは「サクラ」の称呼と「桜」の観念が生じるのに対し、被告標章からは「サクラスカイ」の称呼と「桜と空」の観念が生じ、称呼・観念が相違すると判断した。図形部分についても、原告商標の図形は5枚の花弁が中心部で重なり合う一体的印象を与えるのに対し、被告標章の図形は花弁が間隔をあけて配された異なる印象を与えるとして、外観においても相違すると認定した。取引の実情についても、被告の標章選択の動機やインターネット予約サイトの特徴は類否判断に影響を及ぼさないとして、結論として原告商標と被告標章はいずれも類似しないと判断した。本判決は、結合商標の要部認定において、自他識別力の低さが争われる文字部分の評価につき、当該語の一般的使用状況を具体的証拠に基づき検討した事例として実務的意義を有する。