土地の使用許可申請不許可処分取消等請求控訴事件
判決データ
- 事件番号
- 令和1行コ117
- 事件名
- 土地の使用許可申請不許可処分取消等請求控訴事件
- 裁判所
- 大阪高等裁判所
- 裁判年月日
- 2020年1月23日
- 裁判官
- 江口とし子、大藪和男、森鍵一
AI概要
【事案の概要】 控訴人は、河川区域内の土地に「C」と称する工作物を設置し、これを居所として生活している者である。控訴人は、国土交通省近畿地方整備局長に対し、河川法24条に基づく土地の占用許可及び同法26条1項に基づく工作物の新築許可を申請したが、いずれも不許可処分を受けた。そこで控訴人は、当該不許可処分の取消しや、国の管理する土地に住居を有するための使用権の確認を求めるとともに、不許可処分が取り消されれば住民基本台帳に記録され得る前提で、衆議院議員総選挙や憲法改正国民投票で投票できる地位の確認を求めた。さらに、仮に住民基本台帳への記録が認められないとしても、住所要件と住民票の記録を要求する公職選挙法21条1項や憲法改正手続法22条1項は、憲法13条、14条1項、15条、44条ただし書等に違反すると主張し、選挙人名簿登録地位の確認、選挙人名簿不登録の違法確認、義務付け、さらに救済立法を怠ったとする立法不作為に基づく国家賠償5000円を求めた。原審である大阪地裁は、各確認訴訟を確認の利益や法律上の争訟性を欠くなどとして却下し、不許可処分取消請求及び国家賠償請求を棄却した。これを不服として控訴された事案である。 【争点】 争点は多岐にわたるが、主に(1)選挙人名簿登録地位等に関する確認の訴えの適法性(法律上の争訟性)、(2)本件不許可処分の適法性(住居を有するための土地使用権が憲法13条、22条1項に内在するか)、(3)公職選挙法21条1項及び憲法改正手続法22条1項の憲法適合性、(4)ホームレスなど住所要件を満たせない者の選挙権行使を可能とする救済立法を怠ったことの国家賠償法上の違法性である。控訴人は、最高裁平成20年10月3日判決を前提に、住所要件から「住居を私有するか家賃等を支払うこと」という要件を切り出せると主張した。 【判旨】 大阪高裁は控訴を棄却した。まず、平成20年10月3日最高裁判決は都市公園内のテントの事案につき生活の本拠の実体を否定したにとどまり、住所要件を一般的に判示したものではなく、これを前提としても公職選挙法21条1項等の居住要件を控訴人の主張するような二つの要件に分けることはできないとした。平成7年最高裁判決についても、公職選挙法が特別の訴訟手続を定める名簿訴訟に関するものであって、そのような特別規定のない本件確認訴訟には及ばないとして、争訟性を否定した。本件不許可処分についても、住居を有するためだからといって当然に特定の土地に対する使用権が憲法13条、22条1項により保障されるわけではないとした。立法不作為については、国会議員の立法行為の国賠法上の違法性は最高裁平成27年大法廷判決の示した全体的な判断枠組みで評価すべきであり、生活保護法、ホームレス自立支援特別措置法、生活困窮者自立支援法による各種施策を住所要件緩和より優先させる国会の選択は合理性を欠くとはいえないとして、立法不作為の違法を否定した。なお、不適法な訴えを却下することが憲法32条の裁判を受ける権利を侵害するものではないとも判示した。制度的には、住所要件と住民票記録要件が選挙権行使の前提となっている現行制度の合憲性を、生活困窮者・ホームレス支援立法の運用状況を踏まえて維持した実務的意義のある事例である。