児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反被告事件
判決データ
- 事件番号
- 平成29あ242
- 事件名
- 児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反被告事件
- 裁判所
- 最高裁判所第一小法廷
- 裁判年月日
- 2020年1月27日
- 裁判種別・結果
- 決定・棄却
- 裁判官
- 深山卓也、池上政幸、小池裕、木澤克之、山口厚
- 原審裁判所
- 東京高等裁判所
AI概要
【事案の概要】 本件は、児童ポルノ法(平成26年改正前)7条5項の児童ポルノ製造罪の成否が争われた事案である。被告人は、昭和57年から同59年にかけて初版が出版された写真集に掲載された、18歳未満の者が全裸で寝転ぶなどしている姿態を撮影した写真3点の画像データを素材とし、画像編集ソフトを用いてコンピュータグラフィックス(CG)の画像データ3点を作成した。そして、不特定又は多数の者に提供する目的で、当該CGを含むファイルをハードディスクに記憶・蔵置させた。本件が問題となった時点では、素材となった写真に描写されている人物は既に成人となっていた可能性が高く、被告人側は、児童ポルノ製造罪が成立するためには、製造時において描写されている人物が現に18歳未満の実在人である必要があると主張して争った。第1審・控訴審ともに有罪を認定し、被告人が上告した。 【争点】 児童ポルノ法7条5項の児童ポルノ製造罪が成立するためには、製造時点において、描写されている人物が18歳未満の実在人でなければならないか。また、過去に撮影された児童の写真を素材として作成したCGが、同法2条3項にいう「児童ポルノ」に該当するか。 【判旨(量刑)】 本決定は、被告人の上告を棄却した。法廷意見は、児童ポルノ法2条3項にいう「児童ポルノ」とは、同項各号に掲げる実在する児童の姿態を視覚により認識できる方法で描写したものをいい、実在しない児童の姿態を描写したものは含まないとした。その上で、本件各CGは、実在する18歳未満の児童を撮影した本件各写真に表現された児童の姿態を描写したものであるから、これを蔵置したハードディスクは児童ポルノに当たると判断した。そして、7条5項の製造罪が成立するためには、同法2条3項各号に掲げる児童の姿態を描写した物を所定の目的で製造すれば足り、製造時点において描写されている人物が18歳未満であることを要しないと判示した。本決定は、過去に撮影された実在の児童の姿態を加工・再構成したCGにも児童ポルノ該当性を認め、二次的利用を処罰対象に含めた点で、被害児童の保護を実質的に及ぼす重要な判断である。 【補足意見】 山口厚裁判官は、法廷意見に全面的に賛同しつつ、児童ポルノ製造罪の保護法益について補足した。実在する児童の性的な姿態を記録化すること自体が性的搾取であり、記録化された姿態が他人の目にさらされることによって更なる性的搾取が生じ得る。こうした性的搾取の対象とされない利益は、描写された本人が児童である間にのみ認められるのではなく、本人が18歳に達した後も引き続き同等の保護に値するものであり、児童ポルノ法はこうした利益を現実に侵害する製造行為を処罰することで児童の権利擁護を図ろうとしている、との見解を示した。