AI概要
【事案の概要】 本件は、金融商品取引管理装置に関する特許(特許第5826909号)を有する原告(株式会社マネースクエアHD)が、被告(株式会社外為オンライン)の請求で本件特許を無効とした特許庁の審決の取消しを求めた事件である。本件特許は、いわゆるイフダンオーダー(第一注文が約定したら自動的に第二注文が有効となる注文形式)を繰り返し、逆指値注文と組み合わせて損失を限定する仕組みを内容とし、FX取引で用いられる自動売買システムの中核技術に関わる。特許庁は、原告の訂正請求(決済用の逆指値注文も「注文情報生成手段」が有効にする旨を加える訂正等)について明細書等に記載のない新規事項の追加に当たるとして認めず、分割要件違反・サポート要件違反も認めて本件特許を無効と判断した。原告は訂正要件の判断を中心に審決の違法を主張した。 【争点】 主たる争点は、「注文情報生成手段が売買取引開始時に成行注文を行うとともに、決済のための指値注文および逆指値注文を有効とする」旨を加える訂正が明細書等に記載した事項の範囲内といえるか(特許法126条5項)、訂正明細書の手続補正が訂正請求書の要旨を変更するか(同法131条の2第1項)、訂正前の請求項が実施例と食い違うならサポート要件違反として職権で無効理由通知を発すべきであったか(同法153条2項)である。 【判旨】 知的財産高等裁判所は訂正要件の判断を誤ったとして本件審決を取り消した。まず、本件訂正前の請求項1の文言から、「注文情報生成手段」が主体となって注文情報群の生成だけでなく、売買取引開始時に成行注文を行い決済のための指値注文を有効とする一連の処理を行うことが読み取れると認定した。そのうえで、明細書の実施形態では決済注文の有効・無効切替えを「約定情報生成部」が行うと記載されるものの、【0076】で「上記実施形態は本発明の例示」と明記されている以上、本発明はその形態に限定されず、逆指値注文も有効とする事項を追加する訂正は明細書等から導かれる技術的事項との関係で新たな技術的事項を導入するものではなく、訂正事項1-1ないし1-3は新規事項の追加に当たらないとした。他方、訂正請求書の手続補正については、処理の主体を「注文情報生成手段」から「約定情報生成手段」に置き換えるなど訂正事項の内容を実質的に変更するとして、これを認めなかった審決の判断は是認した。訂正要件の判断の誤りは発明の要旨認定を誤らせ審決の結論に影響するから、その余の取消事由を判断するまでもなく審決は取り消されるべきとされた。本判決は、特許請求の範囲の主体解釈につき実施例に縛られず明細書全体から導かれる技術的事項を基礎に判断すべきことを示し、FXの自動売買プラットフォームをめぐる競業者間の特許無効審判における訂正の可否と明細書解釈の方法を明らかにした実務的意義を有する。