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行政

所得税更正処分等取消請求事件

判決データ

事件番号
平成28行ウ462
事件名
所得税更正処分等取消請求事件
裁判所
東京地方裁判所
裁判年月日
2020年1月30日
裁判官
清水知恵子進藤壮一郎田中慶太

AI概要

【事案の概要】 原告は、横浜市内で保険医療機関であるクリニックを個人開設する麻酔科専門医である。原告は、他の三つの保険医療機関との間で麻酔関連医療業務委託契約を締結し、各病院で実施される手術において麻酔施術を担当し、各病院が算定した社会保険診療報酬の八一%から九〇%に相当する金額の支払を受けていた。原告は、平成二三年分から平成二五年分までの所得税等の確定申告に当たり、この麻酔業務報酬は租税特別措置法二六条一項の「社会保険診療につき支払を受けるべき金額」に該当するとして、同項所定の概算経費率(最大七二%)を乗じた金額を必要経費に算入した。また、消費税についても、同報酬は消費税法別表第一第六号の療養の給付等として非課税となることを前提に、申告をしなかった。 これに対し戸塚税務署長は、原告が受領した麻酔業務報酬は社会保険診療報酬の特例の対象とはならず、消費税法上も非課税とはならないとして、所得税の更正処分および消費税の決定処分ならびに各加算税賦課決定処分を行った。原告がこれらの処分の取消しを求めて本件訴訟を提起した。本件特例は昭和二九年に創設された社会保険医優遇税制であり、実額経費の積上げを不要とする簡便な計算方法を認めるものだが、税負担の公平の観点から適用範囲は限定的に解されてきた経緯がある。 【争点】 本件の中核的争点は、原告が他病院内で行った麻酔施術について、原告自身が「療養の給付」の主体として社会保険診療を行ったと評価できるか否かである。具体的には、租税特別措置法二六条一項の対象となる「社会保険診療につき支払を受けるべき金額」および消費税法別表第一第六号の「療養の給付等」該当性が問題となった。 【判旨】 東京地裁は、原告の請求をいずれも棄却した。 裁判所はまず、健康保険法が昭和三二年改正により医師個人指定制度を改め、保険医療機関を療養の給付の主体とする機関指定制度を採用していることを指摘した。これは、医療サービスが医師のみならず看護師・臨床工学技士等の各種医療従事者の協同と、医療機関の物的設備とが一体となって提供される実態を踏まえ、人と物とが有機的に結合された組織体である保険医療機関を給付主体とし、保険医個人は当該機関が行う療養の給付を構成する個別の診療に従事する者と位置付ける趣旨である。 このような枠組みに照らし、複数の保険医療機関が一人の患者に関与する場合、一方の機関のみならず他方の機関も自ら主体として療養の給付を行ったと評価されるためには、各機関の医師等による関与の具体的内容・程度、物的設備の負担、関与に至った経緯等を総合的に考慮する必要があるとした。 そのうえで本件をみると、手術は執刀・各種処置・麻酔・薬剤投与等が一体として行われるものであり、麻酔施術はその一環にすぎない。本件各病院は、原告を除く執刀医・看護師・臨床工学技士等の医療従事者全員を提供し、設備・器具・薬剤もすべて用意しているのであるから、本件手術を自ら主体として実施したのは本件各病院である。原告の関与は、麻酔専門医の確保が困難な各病院に対し、麻酔を担当する医師を提供したにとどまり、自ら主体となって本件各病院と共に手術を実施したとは評価できない。 原告は、患者との間で別個に診療契約を締結している、社会保険診療報酬を病院と「分配」している、診療録を独自に作成している等の主張をしたが、裁判所は、麻酔承諾書は説明同意の趣旨にとどまり独立の診療契約締結を意味しない、報酬分配の約定は麻酔の専門性に見合った報酬水準を確保する趣旨にすぎない、診療録の独自保管は事後照会への備えにすぎないなどとして、いずれも退けた。また、DPC算定病棟における他医療機関受診との対比についても、DPC事例では別個独立の医療サービスが提供されているのに対し、本件麻酔施術は本体たる手術に包摂される点で前提を異にするとした。 結論として、原告の麻酔施術は本件各病院が実施した手術に包摂される一部分であり、原告が自ら主体として療養の給付を行ったとはいえないから、本件報酬は租税特別措置法二六条一項の「社会保険診療につき支払を受けるべき金額」には該当せず、消費税法上の非課税資産の譲渡等にも該当しないとして、所得税・消費税の各処分はいずれも適法と判断した。本判決は、麻酔専門医による業務委託型の医療提供について、療養の給付の主体性を機関指定制度の趣旨から厳格に判断した先例的意義を有する。

※ この概要はAIが判決全文をもとに自動生成したものです。内容の正確性には十分注意していますが、誤りが含まれる可能性があります。正確な内容は原文をご確認ください。
判例データの一部は CaseLaw LOD(国立情報学研究所、CC BY 4.0)を利用しています。