AI概要
【事案の概要】 原告は、自動車の輸出入事業等を目的とする内国法人であり、マレーシアへの中古自動車輸出を主たる事業としていた。原告は、平成23年7月期から平成27年7月期までの各事業年度において、代表取締役の一人であるAに対して支給した役員給与(2億7200万円から5億2000万円)の全額を損金に算入して法人税の申告を行った。 これに対し、春日部税務署長は、本件役員給与の額には法人税法34条2項に規定する「不相当に高額な部分」があり、同部分は損金に算入できないとして、原告に対し法人税等の各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分を行った。原告はこれを不服として異議申立て・審査請求を経て、本件処分の一部取消しを求めて本訴訟を提起した。 法人税法34条2項は、役員給与のうち不相当に高額な部分の金額を損金不算入とする旨を規定する。これは、法人が役員給与の支給額を恣意的に決定することで法人税の課税を回避する弊害を防ぐための規定である。同項の委任を受けた法人税法施行令70条1号は、「実質基準」(職務内容、法人の収益、使用人給与の支給状況、同業類似法人の役員給与の支給状況等に照らし、役員の職務に対する対価として相当と認められる金額)と「形式基準」(定款・株主総会等で定めた限度額)の二つを設け、いずれか多い金額を「不相当に高額な部分」とする。本件役員給与には形式基準超過部分は存在しないため、実質基準超過額の有無が争点となった。 【争点】 本件役員給与のうち「不相当に高額な部分」(法人税法34条2項)の有無及びその金額が争点である。具体的には、被告が原告の同業類似法人として抽出した10法人(本件各抽出法人)の抽出基準・抽出過程の合理性、並びに、不相当に高額な部分の金額を同業類似法人の役員給与の平均額を基準とするか最高額を基準とするかが問題となった。 【判旨】 裁判所は、原告の請求をいずれも棄却した。 代表者の職務内容については、マレーシアに居住して営業・受注業務を行い原告売上の8〜9割に相当する受注を獲得するなど、中古自動車販売業の役員として一般的に想定される職務の範囲内でも相当高い水準の職責・業績を果たしたと認められる。 しかし、原告の売上金額・売上総利益は平成22年7月期をピークに減少傾向にあり、使用人給与も横ばいないし緩やかな減少傾向にある中で、本件役員給与は逆行して約2〜4倍(4億円)増加し、改定営業利益に占める割合は平成27年7月期には98.6%に達した。結果として営業利益は平成22年7月期の1.3%にまで圧迫されており、本件役員給与の高さ・増加率は著しく不自然と評価せざるを得ない。 同業類似法人の抽出については、埼玉県内の税務署管轄区域を対象とし、日本標準産業分類の小分類「542 自動車卸売業」を基幹事業とし、売上金額が原告の2分の1から2倍までの範囲にある法人を抽出した本件抽出基準は合理的であり、機械的に抽出された10法人は原告の同業類似法人に当たる。原告は従業員数・改定営業利益・独立性等の事情を考慮すべきと主張したが、同業類似法人の抽出において事業の規模・性質の厳格な同一性までは要求されないとして退けられた。 不相当に高額な部分の金額について、被告は主位的に抽出法人の平均額超過部分を主張したが、裁判所は、本件代表者が果たした職責・業績の高さに鑑みると平均額基準では相当と認めるべき部分まで否認するおそれがあるとして、被告の予備的主張に従い、本件各抽出法人の役員給与の最高額を超える部分をもって「不相当に高額な部分」に当たると認めた。これを前提に計算した税額は各更正処分の金額を下回らないため、本件各処分はいずれも適法である。