AI概要
【事案の概要】 本件は、美容器具「美肌ローラ」に関する特許(特許第5230864号)について、原告(株式会社ファイブスター)が特許無効審判を請求したところ、特許庁が「請求は成り立たない」との審決をしたため、原告がその取消しを求めた審決取消訴訟である。 本件特許は、柄の一端に導体で形成された一対のローラを備え、そのローラに太陽電池で生成した電力を通電する美肌ローラに関する発明である。特徴的な構成として、ローラの回転軸が柄の長軸方向の中心線とそれぞれ鋭角に設けられ、一対のローラの回転軸のなす角が鈍角に設けられている点がある。この構成により、肌に押し付けて押し引きを繰り返すと、毛穴を開閉させて毛穴の奥の汚れを効率的に除去できるとされる。 原告は、本件特許が甲第1号証(欧州特許等に基づく従来のマッサージ具で、回転体が旋回軸周りに揺動可能なもの)、甲第4号証及び甲第5号証(太陽電池を用いる従来技術)、並びに周知技術(ローラの回転軸を鈍角に、柄の中心線との角度を鋭角に固定した構成)から、当業者が容易に発明することができたものであり、特許法29条2項違反の無効理由があると主張した。 【争点】 争点は、本件特許発明が甲1発明等を主引用例として進歩性を欠くか否かであり、具体的には、①甲1発明に周知技術を組み合わせ、揺動可能な回転体を鈍角に固定する構成(相違点2)を採用することが容易想到といえるか、②甲1発明の電池を太陽電池に置換する構成(相違点1)を採用することが容易想到といえるかが問題となった。 【判旨】 知的財産高等裁判所第4部(大鷹一郎裁判長)は、原告の請求を棄却した。 裁判所は、甲1発明の技術的意義について、回転体を支持するフォーク形部を旋回軸周りで揺動可能とすることにより、マッサージ中にマッサージされる皮膚部分の輪郭に回転体を適合させ、眼窩、頬骨、鼻、顎、唇など多数の凸面部と凹面部がある顔面を処置するのに特に適するようにする点にあると認定した。 その上で、仮に甲1発明に本件周知の構成(ローラの回転軸のなす角を鈍角に、柄の中心線との角度を鋭角に固定する構成)を適用すると、フォーク形部が固定されて旋回軸周りで揺動可能でなくなる結果、回転体を皮膚部分の輪郭に適合して接触させることができなくなり、又は接触させる範囲が制限され、顔面処置に適さなくなるから、甲1発明に本件周知の構成を適用することには阻害要因があると判断した。また、甲1には周知構成の適用に関する記載も示唆もないため、動機付けも認められないとした。 したがって、相違点2について当業者が容易に想到し得たとはいえず、その余の相違点を検討するまでもなく本件特許発明1は進歩性を有するとした審決の判断に誤りはないと結論付けた。本件特許発明2についても相違点2’は実質的に同じ相違点であり、本件特許発明3ないし7も本件特許発明1又は2を引用するものであることから、同様の理由によりいずれも進歩性が否定されないとした。