都道府県を選択して、裁判官を探すことができます

全国 2522 人の裁判官3131 件の口コミ
知財

損害賠償等請求控訴事件

判決データ

事件番号
令和1ネ10044
事件名
損害賠償等請求控訴事件
裁判所
知的財産高等裁判所
裁判年月日
2020年1月31日
裁判官
大鷹一郎古河謙一岡山忠広
原審裁判所
東京地方裁判所

AI概要

【事案の概要】 本件は、日本製鉄株式会社(被控訴人、旧新日鐵住金)が、同社の元社員であるX(控訴人)に対し、控訴人が同社の保有する方向性電磁鋼板に関する技術情報(本件技術情報)を在職中に取得し、退職後に韓国の鉄鋼メーカー株式會社ポスコ(POSCO)に開示した行為が不正競争防止法2条1項4号又は7号の不正競争(営業秘密の不正取得又は不正開示)に当たると主張して、技術情報の使用・開示の差止め、電子ファイル等の廃棄、及び約10億2300万円の損害賠償等を求めた事案の控訴審である。 方向性電磁鋼板は変圧器等の鉄心材料として用いられる高機能鋼板であり、被控訴人は長年にわたり膨大なコストと研究を積み重ねて製造ノウハウを蓄積してきた。控訴人は被控訴人に長期間勤務して電磁鋼板部門に携わっていたが、退職後にPOSCOに協力し、被控訴人の工場操業条件等に関する技術情報を開示したとされる。被控訴人はPOSCOに対しても別途986億円の損害賠償等を求める訴訟を提起しており、同訴訟は和解金300億円の支払により決着していた。 原審(東京地裁)は、本件技術情報は不競法2条6項の「営業秘密」に該当すると認定した上、控訴人が平成17年から平成19年にかけて不正の利益を得る目的でこれをPOSCOに開示した行為が同法2条1項7号の不正競争に当たるとして、被控訴人の請求をいずれも認容した。控訴人はこれを不服として控訴した。 【争点】 主な争点は、本件技術情報の「営業秘密」該当性(特に非公知性)、控訴人による不正競争の成否、損害額、POSCOの和解金による弁済の抗弁の成否、及び消滅時効の成否である。控訴人は、本件技術情報の大半は特許公報や論文等の公知文献により既に公知となっており、非公知性の要件を欠くと主張するとともに、POSCOが支払った和解金により自らの債務も消滅したと主張した。 【判旨】 知的財産高等裁判所第4部は、控訴を棄却し、原判決を維持した。 営業秘密該当性については、本件技術情報は被控訴人の大規模工場における方向性電磁鋼板の工業生産のための実際の操業に関する情報であり、長い年月と膨大なコストをかけ、数多くのラボ実験・現場試験から得られたデータと知見に基づき形成された具体的操業条件等であるとした。控訴人が援用する公知文献には一部関連情報の記載があるとしても、それらはラボ実験条件等のごく一部にすぎず、実務的な有用性の点で本件技術情報とは性質を異にするから、公知文献の存在によって非公知性は否定されないと判断し、本件技術情報1ないし17及び26のいずれについても非公知性を肯定した。 不正競争の成否については、控訴人が被控訴人在職中の地位を利用して本件技術情報を取得し、退職後POSCOに転職又は協力して高額の報酬を得ながらこれを開示した事実を認定し、不競法2条1項7号の不正開示に当たるとした。 弁済の抗弁については、POSCOと控訴人の負う債務は不真正連帯債務であり、POSCOと被控訴人との間で債務額について合意があったとしても、その効果は控訴人に及ばないと判示した。また、POSCOが支払った和解金300億円が、986億円を請求する訴訟のうちいかなる債務のいかなる額の弁済に充てられたかを認めるに足りる証拠はなく、弁済の事実の証明軽減を認めるべきとの主張も採用できないとして、弁済の抗弁を排斥した。 本判決は、製造業の現場で蓄積された操業ノウハウが公知文献の存在にもかかわらず営業秘密として保護されうることを明確にし、元従業員による海外企業への技術流出に対して厳しい姿勢を示した点で、技術情報管理と人材流出対策の両面において重要な先例となる判決である。

※ この概要はAIが判決全文をもとに自動生成したものです。内容の正確性には十分注意していますが、誤りが含まれる可能性があります。正確な内容は原文をご確認ください。
判例データの一部は CaseLaw LOD(国立情報学研究所、CC BY 4.0)を利用しています。