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【事案の概要】 原告は、平成27年3月10日に発明の名称を「UFOの飛行原理に基づくUFO飛行装置」とする特許出願(本件出願、請求項の数1)をした。本願発明は、「磁石及び対をなす電極が取り付けられた物体であって、それらの電極間で放電が可能で、放電時に於いて運動する電子が作る磁界から磁石が受ける力を物体の推力として利用するもの」である。原告は手続補正を行ったが、平成30年11月7日付けで拒絶査定を受け、同年12月8日に拒絶査定不服審判請求をしたところ、令和元年8月5日、特許庁は本件出願が実施可能要件(特許法36条4項1号)に違反するとして審判請求は成り立たない旨の審決をした。本件は、原告が同審決の取消しを求めた審決取消訴訟である。特許法36条4項1号は、発明の詳細な説明を当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載することを求めており、本件のような物の発明では、当業者が生産・使用できる程度の開示が必要となる。 【争点】 本願明細書の発明の詳細な説明が、当業者が本願発明に係る「UFO飛行装置」を生産・使用することができる程度に明確かつ十分に記載されているか(実施可能要件の充足性)、とりわけ、外部からの力の作用や質量変化を伴わずに装置が推進力を得るとする本願発明が、運動量保存の法則および作用反作用の法則との関係で技術的に実施可能といえるか。 【判旨】 裁判所は原告の請求を棄却した。本願発明に係る「UFO飛行装置」は電磁力により物体に推進力を与えるものとされるが、明細書には装置外部の電磁場から影響を受ける旨の記載も外部電磁場の状態を特定する記載もなく、地球から月まで往復可能とされることから、外部の電磁場に依存せず動作することが前提とされている。また外部物体からの反作用や質量変化についても記載がなく、原告自身も連続的・非連続的な反作用・外力が作用せず質量変化も生じないことを認めている。そうすると本願発明は、外力を受けず質量も変化しないのに速度が変化する装置ということになり、運動量保存の法則に反し、また推進力に対向する反作用の力も見当たらず作用反作用の法則にも反する。技術常識に反する結果を実現するとする発明であるにもかかわらず、明細書には実際に推進した実験結果の記載がない。自動車の例は路面との摩擦という外力により推進するもので本願発明とは異なる。したがって実施可能要件を満たすとはいえない、と判断された。