所得税法違反
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、指定暴力団N3會の四代目会長(後に五代目総裁)である被告人N1と、その預貯金等を管理していた被告人N2が共謀の上、被告人N1の所得税を免れようと企て、N3會に対して上納された資金からの被告人N1の取り分(本件分配収入)を除外し、被告人N1以外の名義の銀行口座(第2系列口座)に留保するなどの方法により所得を秘匿した上、平成22年分から平成26年分までの5年分について虚偽過少の所得税確定申告書を提出し、合計約3億2067万円の所得税をほ脱したとして、所得税法違反(ほ脱犯)に問われた事案の控訴審である。原審(福岡地裁)は両被告人を有罪とし、これに対し被告人両名が訴訟手続の法令違反及び事実誤認を主張して控訴した。 【争点】 (1)第2系列口座への入金の全てについて反面調査を行わず、限られた資料によりほ脱額を認定した原判決の手続が、課税実務との対比において著しく不平等で、憲法14条、30条、31条に反する違憲・違法なものであるか(訴訟手続の法令違反)。(2)第2系列口座に入金された金銭が、N3會の組織資金ではなく、実質的にみて被告人N1個人に帰属する所得といえるか(所得帰属に関する事実誤認)。(3)接見等禁止決定下で身体拘束されていた被告人N1について、平成26年分の虚偽過少申告及びほ脱の認識・認容が認められるか。 【判旨(量刑)】 福岡高裁は、本件各控訴をいずれも棄却し、被告人N1に対しては当審における未決勾留日数中360日を原判決の懲役刑に算入した。(1)原判決は推計課税の方法を用いたものではなく、客観的資料で明らかな第2系列口座への入金額をほ脱所得と認定したにすぎず、金銭の帰属を間接事実の総合により認定する手法自体は刑事裁判の一般的な事実認定として許容され、租税平等主義や適正手続に反する点はない。(2)第1ないし第3系列口座への特異な一定比率(当初3対3対1、その後概ね5対1)の入金状況、N3會に対する上納金の組織的存在と最高幹部間での分配実態、第3系列口座内金銭がN3會経費に充てられていた事実、第2系列口座からの出金の一部が被告人N1の交際相手のマンション購入資金等私的用途に費消されていた事実等を総合すれば、N5死亡の平成20年6月30日以前のみならず、それ以降も第2系列口座には上納金からの被告人N1の取り分が継続的に入金されていたものと優に推認でき、同口座内の金銭は実質的に被告人N1に帰属すると認められる。(3)被告人N1は平成25年分まで毎年、第2系列口座に関する所得を除外した確定申告が行われていることを認識・認容し、被告人N2に申告を委ねてきたものであり、平成26年分についても身体拘束中に申告予定の変更等の行動を取っていない以上、同様の虚偽過少申告が行われることを認識・認容していたものと認められ、申告税額と実際税額との差額全体についてほ脱の故意がある。以上により原判決に違憲・違法、事実誤認はなく、被告人両名の控訴はいずれも理由がない。