精神保健指定医の指定取消処分の取消請求控訴事件
判決データ
- 事件番号
- 令和1行コ156
- 事件名
- 精神保健指定医の指定取消処分の取消請求控訴事件
- 裁判所
- 東京高等裁判所
- 裁判年月日
- 2020年2月6日
- 裁判官
- 村田渉、一木文智、建石直子
AI概要
【事案の概要】 精神保健指定医の指定取消処分の取消請求控訴事件。平成24年6月20日に厚生労働大臣から精神保健及び精神障害者福祉に関する法律18条1項に基づき精神保健指定医として指定された被控訴人(医師)が、平成28年10月26日、指定申請時に提出した精神科実務経験証明書類(指定医ケースレポート)のうち1通について、被控訴人自ら担当として診断又は治療等に十分な関わりを持った症例に関するものとは認められず、不正なケースレポートを作成・提出したことにより指定医として著しく不適当(法19条の2第2項)であるとして、指定取消処分を受けた。被控訴人は、本件処分は事実的根拠を欠き、処分行政庁である厚生労働大臣の裁量権の範囲を逸脱し又は濫用して行われたと主張して、処分の取消しを求めた。原審(東京地裁)は被控訴人の請求を認容し、控訴人(国)が控訴した。 【争点】 被控訴人が指定医の指定申請時に提出した本件ケースレポート対象症例(アルコール離脱せん妄の患者)について、「自ら担当として診断又は治療等に十分な関わりを持った症例」に該当しないことを認識しながらレポートを作成・提出したといえるか、これにより指定医として著しく不適当と認められるか。特に、チーム診療体制下で被控訴人の関与が補助的・断片的にとどまるかが問題となった。 【判旨】 控訴棄却。指定医制度は患者の人権に対する重大な制約を伴う医療を前提とするものであるが、「自ら担当として診断又は治療等に十分な関わりを持った症例」という要件は抽象的であり、控訴人が主張する継続性・直接性・主体性を全過程で満たすことが要求されるとの具体的内容を指定医事務取扱要領等から直ちに読み取るのは困難である。指定取消処分の適法性を認めるためには、被控訴人が要件を充足しないことが明らかであるにもかかわらずあえてケースレポートを作成・提出したことを要する。本件では、被控訴人が本件患者の神経診察に関与し、動機付け面接を主張して診療チーム内で意見交換を求め、自ら複数回面接を行うなど診断確定及び精神療法選択に相当程度貢献しており、チーム診療における主治医・担当医概念の多義性も踏まえると、被控訴人が要件非該当を認識しつつあえてレポートを作成・提出したとまでは認められない。したがって、指定から4年4か月余経過後に行われた本件処分は、厚生労働大臣の裁量権の範囲を逸脱又は濫用し、法19条の2第2項に反する違法なものとして取消しを免れない。