不正指令電磁的記録保管
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、ウェブサイト「A」の運営者である被告人が、閲覧者の同意を得ずに、閲覧者の電子計算機の中央処理装置に仮想通貨の取引履歴の承認作業(マイニング)等の演算を行わせるプログラムコード(いわゆるCoinhive)を、サイトを構成するファイル内に設置・保管したとして、不正指令電磁的記録保管罪(刑法168条の2第1項)に問われた事案の控訴審判決である。被告人は、広告収入に代わるサイトの収益源として本件プログラムコードを導入し、閲覧者に気付かれないままそのCPUを利用してマイニングを行わせ、得られた報酬の7割を自ら取得していた。原審(横浜地裁)は、反意図性は肯定したものの、ウェブサービスの質の維持向上への寄与や公的機関の事前の注意喚起が存在しなかったこと等を理由に不正性を否定し、無罪を言い渡した。これに対し検察官が控訴した。 【争点】 本件プログラムコードが刑法168条の2第1項の「不正指令電磁的記録」に該当するか、具体的には反意図性および不正性(社会的許容性)が認められるか、並びに被告人に実行の用に供する目的および故意が認められるかが争われた。 【判旨(量刑)】 東京高裁は、反意図性について、プログラムの機能そのものを踏まえ一般的な使用者が機能を認識しないまま使用することを許容していないと規範的に評価できる場合に肯定すべきとした上で、本件プログラムコードは閲覧者に利益をもたらさず、無断でCPU機能を提供させて運営者が利益を得るものであるから反意図性を肯定した。不正性についても、プログラムに対する信頼保護および電子計算機による適正な情報処理の観点から社会的に許容される余地はなく、ウェブサービスの質の維持向上、賛否両論の存在、公的機関の注意喚起の不存在等を理由に許容性を肯定した原判決の判断は首肯できないとした。さらに、被告人は指摘を受けた後も仕様を変更せず保管を継続しており、不正指令電磁的記録該当性を基礎づける事実を実質的に認識していたとして、実行の用に供する目的および故意も認定した。以上により、原判決を破棄し、刑訴法400条ただし書により自判、自己の利益のためプログラムに対する社会一般の信頼を害する悪質な犯行であるとして、被告人を罰金10万円に処した。