過失運転致傷被告事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 被告人が普通乗用自動車を運転中、前方左右の注視を怠り進路を適正に保持しないまま漫然と時速約60キロメートルで進行した過失により、自車を対向車線に進出させ、対向進行してきたA車両右側部に自車右前部を衝突させ(第1衝突)、さらにA車両後方を進行していたB車両前部に自車左前部を衝突させた(第2衝突)上、自車を道路右方のガードレールに衝突させ、A・B及び自車同乗者Eに傷害を負わせたとして、過失運転致傷罪で起訴された事案の控訴審である。原審山口地裁下関支部は、第1衝突地点がA車両進行車線上にあったと認定できず、A車両が中央線を越えて被告人車両の進路上に進出した可能性を否定できないなどとして被告人に無罪を言い渡した。検察官が、訴訟手続の法令違反及び事実誤認を理由に控訴した。 【争点】 原審の争点整理で顕在化しなかった事故態様について釈明義務違反があったか(訴訟手続の法令違反)、及び甲工学博士の鑑定・被害者Aの証言の証拠評価に誤りがあり、第1衝突地点がA車両進行車線上であったと認定できるか(事実誤認)が争点である。また、実況見分調書作成に関与したC警察官による虚偽記載の疑いが再審事由(刑訴法435条)に該当する可能性との関係で、控訴審が自判すべきか差戻しすべきかも問題となった。 【判旨(量刑)】 広島高裁は、釈明義務違反の主張は退けたものの、甲鑑定は本件タイヤ痕の起点付近をもって第1衝突地点と断定しており、原審が甲鑑定の証明力を限定的に評価したのは不正確であると判示した。A車両停止位置に関する周辺的記憶の誤りは、衝突地点という中核的事項の信用性を左右しないとしてAの証言の信用性を肯定し、A車両が中央線を越えたとの仮説を支える証拠は存在せず、被告人が自車線左側ではなく対向車線側へ転把する衝突回避行動も不自然であるなどとして、原判決の事実認定は論理則・経験則に反し不合理であるとした。もっとも、B立会いを装った本件実況見分調書1の虚偽記載についてC警察官に証拠偽造罪・虚偽公文書作成罪(刑法104条、156条、158条)が成立する可能性を否定できず、刑訴法435条所定の再審事由に該当し得るため、当審で破棄自判することは相当でないとした。そこで、原判決を破棄し、再審事由該当事情の有無を確認させるため、本件を原裁判所である山口地方裁判所に差し戻した。