AI概要
【事案の概要】 本件は、被告人が共犯者Aと共謀の上、警察官になりすまして高齢者からキャッシュカードを窃取し、さらに窃取したキャッシュカードを用いてATMから現金を引き出したという、窃盗5件の事案である。被告人は、放送受信料の契約・収納業務を委託されていた会社の代表者の立場を悪用し、業務のために貸与された端末から高齢女性契約者の氏名・住所・銀行口座等の個人情報を不正に入手して共犯者に提供した。共犯者は、この情報を基に令和元年9月17日、同月18日、同月27日の三日にわたり、名古屋市内および愛知県春日井市内の73歳女性2名および82歳女性1名宅を訪問し、口座が差し押さえられている等と虚言を用いて封筒に入れさせたキャッシュカード計4枚をあらかじめ用意した封筒とすり替えて窃取。さらに窃取した2名のカードを使用して、合計16回にわたりATMから現金合計249万9000円を引き出した。近年多発する特殊詐欺を模した「すり替え型」窃盗であり、業務上の信頼関係と個人情報保護が問われた事案である。 【判旨(量刑)】 名古屋地方裁判所は、被告人を懲役3年に処し、未決勾留日数中40日を算入した上で、5年間の執行猶予を付した。裁判所は、犯行を計画し主導したのは共犯者であるものの、本件各犯行は被告人の情報提供がなければ生じ得なかったものであり、被告人の果たした役割は重大であると指摘。業務委託元及び契約者の信頼を裏切り、委託業務においてのみ使用を許された重要な個人情報を犯罪に利用した点についても強い非難を免れないとした。高齢女性を狙い、警察官になりすました特殊詐欺模倣の手口の悪質性、被害金額の高額性、短期間に犯行を重ねた規範意識の低下等から、刑事責任は相応に重いとした。他方で、被告人が犯行を認めて反省を示していること、判示第1・第3の各被害者との間でATM窃取額相当の被害弁償示談を行い被告人負担分45万円を支払ったこと、母親の監督誓約、前科がないこと等の酌むべき事情を考慮し、直ちに実刑に処するのではなく、今回に限り社会内での更生機会を与えるのが相当と判断した。求刑通り懲役3年を言い渡した上で執行猶予を付した点に、責任非難と再犯防止・社会復帰のバランスを重視した量刑判断が示されている。