AI概要
【事案の概要】 本件は、原告(スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー)が、「機械的締結具、締結装置、及び使い捨て吸収性物品」に関する発明について特許出願をしたところ拒絶査定を受け、これに対する拒絶査定不服審判(不服2017-19482号)を請求するとともに特許請求の範囲について補正(本件補正)を行ったが、特許庁が本件補正を却下した上で審判請求は成り立たないとする審決(本件審決)をしたため、被告(特許庁長官)を相手に、同審決の取消しを求めた事案である。争点の中心は、本件補正後の請求項1に係る発明(補正発明)が特開平11-155612号公報に記載された引用発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたか(独立特許要件としての進歩性)である。 【争点】 補正発明と引用発明との相違点1ないし3、すなわち、①熱可塑性裏材の厚さを「20〜80マイクロメートル」とする点、②直立締結要素の高さを「40〜300マイクロメートル」とする点、③機械的締結具の坪量を「1平方メートル当たり25〜75グラム」とする点について、いずれも引用発明に基づき当業者が容易に想到し得たかが争われた。原告は、引用文献にはオス側シート材1の厚さを薄くする動機付けはなく、特に基材シート2の厚さや オス型係合部3の高さをいずれも上限値の数分の1とする構成を兼ね備えた発明への想到は容易でない等と主張した。 【判旨】 知的財産高等裁判所(第4部)は、原告の請求を棄却した。裁判所は、引用文献の【0016】及び【0022】の記載から、屈曲性に優れたオス側シート材1を得るために基材シート2の厚み及びオス型係合部3の高さを好ましいとされた範囲内でより小さな値とし、オス側シート材1の厚さを薄くするという動機付けの示唆があると認定した。その上で、①基材シート2の厚さを20〜80マイクロメートルの範囲内で選択すること、②オス型係合部3の高さを200〜300マイクロメートルの範囲内で選択することは、いずれもごく自然に想到されると判断した。また、③坪量についても、材料をポリエチレン又はポリプロピレン(密度0.91g/cm³)と想定し、引用文献記載の数値範囲のうち小さい方の値を選択することで通常想定される坪量は約19.9〜約42.7g/m²となるから、25〜75g/m²の範囲の値を選択することに格別の困難はないとした。高さが低いオス型係合部の係合力が低いことは技術常識とはいえず、高い係合力との両立も可能であるとして、原告主張をいずれも斥け、相違点1ないし3に係る容易想到性を肯定した本件審決の判断に誤りはないと結論付けた。