AI概要
【事案の概要】 本件は、北海道夕張郡a町議会議員選挙(平成31年2月28日施行)に際し、立候補予定者であった被告人Aと、その後援会会長(被告人B)、後援会幹事長(被告人C)、後援会会計長(被告人D)の4名が、立候補届出前の同月14日及び19日、町内4地区において「激励会」と称する会合を計4回開催し、合計144名の選挙人に対し約23万円相当の飲食の供応接待を行うとともに、立候補届出前の選挙運動をしたとして、公職選挙法違反(供応接待罪・事前運動罪)の共謀共同正犯に問われた事案である。被告人らはいずれも事実関係を認めた(認め事件)。公職選挙法は、選挙の公正を確保するため、投票取りまとめ等の報酬としての供応接待を禁じ(221条1項1号)、また立候補届出前の選挙運動(事前運動)を禁じている(129条、239条1項1号)。 【判旨(量刑)】 札幌地方裁判所は、被告人Aを懲役10月、被告人B・C・Dをそれぞれ懲役6月に処し、いずれも5年間執行猶予を付した。 量刑の理由として、供応接待を受けた人数が多数に及び、対象4地区の有権者約3割が激励会に出席していたこと、本件選挙における被告人Aの得票数524票との対比からも選挙の公正さを害した程度は大きいこと、会費を受領したかのように装うため架空の領収証を作成・発行するなど犯行態様が悪質であることを指摘し、懲役刑の選択を相当とした。 他方で、当該地区では従前から統一候補者を支援する慣習として「激励会」が繰り返されてきた経緯があるが、民主主義社会における選挙の重要性に鑑みれば、立候補者及び後援会幹部は公職選挙法のルールを理解・遵守すべきであり、慣習を理由に責任非難を殊更弱めるのは相当でないとした。もっとも、1人当たりの飲食代金が千数百円にとどまる点、犯行態様が前例を踏襲したもので独自に考案したものでない点は、一定程度有利に斟酌した。 個別の責任については、被告人Aは激励会開催を決め資金を提供し自ら支援を求めたとして最も重い責任を負うべきとし、C(準備取仕切り)とD(資金分配)は同程度、Bは具体的役割は小さいものの町議を3期務めて違法性認識があり架空領収証の提案等をしたとしてC・Dと同程度の責任を負うとした。前科がないこと、事実を認めていること、被告人Aが町議を辞職していること等を踏まえ、実刑は相当でないとして執行を猶予した。公民権停止期間を5年より下回る特段の事情はないとして、猶予期間は5年とされた。