特許権侵害差止等請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 原告フジ医療器は、椅子式マッサージ機に関する3件の特許権(本件特許権A「椅子式施療装置」、本件特許権B「椅子式マッサージ機」、本件特許権C「椅子式マッサージ機」)を保有していた。原告は、競合メーカーであるファミリーイナダが製造・販売する12機種のマッサージチェア(INADA DREAMWAVE、ファミリーメディカルチェア各種等)が、上記各特許発明の技術的範囲に属すると主張し、①被告製品の製造・販売・販売の申出の差止め、②被告製品の廃棄、③特許権侵害の不法行為に基づく損害賠償金一部請求15億円及び遅延損害金の支払を求めた。被告は、各製品の構成が本件各発明の構成要件を充足しないこと、及び各特許には無効理由(新規性欠如・進歩性欠如・補正要件違反・サポート要件違反等)が存在することを主張し、全面的に争った。 【争点】 中心的な争点は、被告製品が本件各特許発明の技術的範囲に属するかという構成要件充足性の判断である。具体的には、本件発明Aについては「尻用エアバッグを膨らませて利用者の腰の高さ位置を徐々に高くしながら、腰用施療子を作動させる制御手段」(構成要件E)の充足性、本件各発明Bについては「背凭れ部の左右の側壁部」(構成要件B)及び均等侵害の成否、本件各発明Cについては「空洞部」「前腕挿入開口部」「内側立上り壁」(構成要件B、C等)の意義と充足性が問題となった。併せて各特許の無効理由の存否も争われた。 【判旨】 大阪地方裁判所第26民事部(杉浦正樹裁判長)は、原告の請求をいずれも棄却した。本件発明Aについては、特許請求の範囲と明細書の記載を踏まえ、尻用エアバッグは利用者の腰部に対して十分なマッサージを行い得る程度に腰の高さ位置を徐々に高くするものでなければならないと解釈したうえで、被告製品1〜8の尻用エアバッグはそのような位置変化をもたらす構成を備えていないとして、構成要件Eの充足を否定した。本件各発明Bについては、「背凭れ部の左右の側壁部」の意義を明細書記載の技術的意義に沿って限定的に解釈し、被告製品1〜5、8〜12がこれを充足しないと判断し、均等侵害も否定した。本件各発明Cについては、肘掛部の「空洞部」が全体にわたって「内側立上り壁」によって画されるものと解釈し、被告製品1及び2の肘掛部はこの構成を備えないとして非充足と判断した。以上から、被告各製品はいずれも本件各発明の技術的範囲に属さず、その余の無効理由等については判断するまでもなく請求棄却となった。本判決は、マッサージ機分野における技術用語の意義を明細書記載の課題・作用効果に照らして限定的に解釈したうえで、構成要件充足性と均等侵害の双方を慎重に否定したものであり、機構系特許のクレーム解釈実務に実務的示唆を与える事例である。