AI概要
【事案の概要】 本件は、県立高等学校の教諭でサッカー部顧問を務めていた被告人が、推薦入学者選抜における部活動顧問推薦手続に関する職務に従事していた公務員の立場を悪用し、中学生の保護者から賄賂を収受したとして、収賄罪(刑法197条1項後段)に問われた事案である。被告人は、保護者Aから、同校サッカー部への部活動推薦入学を希望するAの二男Bを推薦するなど有利便宜な取り計らいをしてもらいたい旨の請託を受けてこれを承諾し、その報酬として、平成27年8月から平成28年3月にかけて、計3回にわたり飲食店での接待(合計約3万1165円相当)を受けるとともに、全国百貨店共通商品券100枚(額面合計10万円)の供与を受け、賄賂の総額は13万1165円に達した。被告人は公立学校教諭として「みなし公務員」ではなく地方公務員法上の公務員に該当し、推薦手続に関する職務は収賄罪の客体となる「職務」に該当する。 【判旨(量刑)】 福岡地裁小倉支部は、被告人を懲役1年に処し、3年間その刑の執行を猶予するとともに、13万1165円を追徴した(求刑懲役1年・主文同旨の追徴)。 裁判所は、本件について、被告人が中学生の保護者から飲食接待を受けた上で、生徒の実績等に関わらず当該中学生をスポーツ推薦の候補者として推薦し、その謝礼として商品券を受け取ったものであり、サッカー部顧問としての自らの権限を悪用し、推薦入学者選抜制度の公正・信頼を大きく害した悪質な犯行であって、社会的影響も大きいと指摘した。また、賄賂総額が13万円を超えており、その額は小さくないとして、刑事責任は軽いものではないと評価した。 他方で、本件は先輩教諭からの紹介や依頼を受けたことに端を発し、保護者側からの積極的な賄賂の提供に応じたという経緯があり、一定の酌むべき事情が認められること、被告人に前科がないこと、事実関係を素直に認め反省の弁を述べていること、妻が出廷し今後の監督を誓約していることなどの事情を総合考慮し、今回は刑の執行を猶予するのが相当と判断した。追徴については、収受した飲食接待および商品券をいずれも没収することができないため、刑法197条の5後段に基づき賄賂相当額13万1165円を被告人から追徴した。 本判決は、公立学校教諭による推薦入学選抜をめぐる収賄事件として、教育現場の公正さに対する社会的信頼を維持する観点から刑事責任を明確にしつつ、犯行経緯や反省状況を踏まえて執行猶予を付した事例であり、学校関係者の職務の公正性確保の重要性を改めて示す実務的意義を有する。