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最高裁

原爆症認定申請却下処分取消等請求事件

判決データ

事件番号
平成30行ヒ215
事件名
原爆症認定申請却下処分取消等請求事件
裁判所
最高裁判所第三小法廷
裁判年月日
2020年2月25日
裁判種別・結果
判決・破棄自判
原審裁判所
名古屋高等裁判所

AI概要

【事案の概要】 長崎原爆の被爆者である原告(被上告人)が、慢性甲状腺炎(橋本病)を申請疾病として、原子爆弾被爆者援護法11条1項に基づく原爆症認定を申請したところ、厚生労働大臣がこれを却下したため、国を相手に却下処分の取消し等を求めた事案である。原告は9歳時に長崎市で被爆し、平成6年に橋本病と診断された後、約16年間にわたり総合病院で経過観察を受けてきたが、抗TPO抗体陽性やFT3低値は認められたものの、甲状腺機能低下症の指標となるTSHやFT4に異常値はなく、投薬治療は一度も行われていなかった。本件の争点は、投薬治療を伴わない経過観察のみを受けている状態が、原爆症認定の要件である「要医療性」(現に医療を要する状態)を満たすか否かである。原審は、経過観察は法10条2項1号の「診察」に該当し、積極的治療の有無を問わず要医療性が認められるとして、処分を取り消したため、国が上告受理申立てをした。 【争点】 原爆症認定の要件である「要医療性」について、投薬治療等を伴わない経過観察のみが行われている場合でも要医療性が認められるか。経過観察の性質(治療適応時期を見極めるためのものか、積極的治療行為の一環か)をどう評価すべきか。 【判旨】 最高裁は原判決を破棄し、原告の控訴を棄却した。援護法は、放射線起因性が認められる疾病について、要医療性の有無に応じて健康管理手当・医療特別手当・特別手当を段階的に支給する制度枠組みを採用しており、とりわけ医療特別手当は健康管理手当の約4倍という手厚い水準で支給される。これは、現に医療を要する状態にあることによって余儀なくされる入通院費雑費や栄養補給等の特別の出費を補う趣旨を含むためである。こうした制度趣旨に照らせば、経過観察を受けている被爆者について「現に医療を要する状態」が認められるためには、経過観察自体が当該疾病の治療に必要不可欠で、かつ積極的治療行為の一環と評価できる「特別の事情」が必要であり、単に医学的に妥当な経過観察が行われているだけでは足りない。具体的には、疾病の悪化・再発の医学的蓋然性、結果の重大性、経過観察の目的・頻度・態様、医師の指示内容等を総合考慮して個別に判断すべきである。本件において、慢性甲状腺炎が甲状腺機能低下症に至る割合は10%未満で重篤性も高くなく、原告も16年間TSH・FT4に異常値がなく投薬も不要であり、経過観察は合併症・続発症の発症確認にとどまるものであって、積極的治療行為の一環とはいえず、特別の事情は認められないと判示した。 【補足意見】 宇賀克也裁判官は、慢性甲状腺炎であっても将来的な症状変化により特別の事情が認められる可能性は否定されないと強調するとともに、健康診断の結果を踏まえた指導後の経過観察についても、法廷意見の基準に照らして「現に医療を要する状態」への該当性を判断すべき旨を補足した。 本判決は、原爆症認定における「要医療性」の判断基準を初めて明示した重要判例であり、経過観察のみで要医療性を肯定する近時の下級審の流れに歯止めをかけるものである。被爆者援護行政の実務に大きな影響を及ぼすとともに、同種の認定訴訟で経過観察の「積極的治療行為の一環」性が争点化される契機となった。

※ この概要はAIが判決全文をもとに自動生成したものです。内容の正確性には十分注意していますが、誤りが含まれる可能性があります。正確な内容は原文をご確認ください。
判例データの一部は CaseLaw LOD(国立情報学研究所、CC BY 4.0)を利用しています。